世界を一変させた新型コロナウイルス(COVID-19)。感染症の今後に備え、国際社会では「パンデミック(世界的大流行)条約」などのルールづくりが進んでいます。

コロナの経験生かし 世界中で公平な医療を
Q 感染症とは? どんな例がある?
A 細菌やウイルスなどが体内に入り、増えることで起きる病気

感染症には、比較的軽い症状で治るものから、命の危険にかかわるものまで、いろいろあります。かぜや食中毒も感染症です。
特に新しく出現した病原菌に対しては、体が病原菌と戦うしくみである免疫をだれも持っていません。対処のための知識やワクチン、治療薬もないため、なすすべもなく感染が国境をこえて広がる危険があります。このような感染症を「新興感染症」といいます。
2019年末から流行が始まった新型コロナウイルス感染症はまさにこの例で、世界規模で大流行し、制御ができなくなるパンデミックを起こしました。
また、結核、マラリア、デング熱のように、過去には患者数が減った感染症が再び流行してしまう「再興感染症」のリスクもあります。グローバル化が進み、人やモノの行き来がさかんな現代は、感染症がまたたく間に世界に広がりやすい時代でもあるのです。
Q 新型コロナで世界の感染症対策はどう変わった?
A 次のパンデミックに備え、国際社会で新たなルール作りが進む

世界保健機関(WHO)によると、新型コロナは19年12月からの4年間で世界の約7億7千万人が感染し、約700万人が亡くなる大変な事態となりました。効果的な感染対策が評価された日本でも3千万人以上が感染、7万4千人以上が亡くなっています。
WHOはこの経験を次のパンデミックに生かすため、ルールを作ることを決めました。その一つが「パンデミック条約」と呼ばれる新しい条約です。
今月27日から開かれるWHO総会での採決を目指して、日本を含む194のWHO加盟国が交渉中です。
キーワードは「公平性」。豊かな国もまずしい国も、世界中の人が公平な医療を受けられることをかかげています。
ところが、交渉はかんたんには進みません。今回のパンデミックで大きな役割を果たしたのは、アメリカなどでスピード開発に成功したワクチンです。接種した国から感染爆発にブレーキがかかりました。しかし初めは、高額のワクチンを先進国が買いしめ、途上国は必要な量を確保できずに接種がおくれてしまったのです。
次のパンデミックでこのような不公平をなくすには、製薬会社が特許を公開したり、途上国にワクチンを安く提供すればよいでしょう。けれども、開発にはとてもたくさんのお金がかるため、それでは困るという先進国側の主張とぶつかります。世界の分断が進む中、人類の知恵が試されます。
最近のNEWS
「5類」に引き下げ1年 引き続き感染対策を
新型コロナの感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ5類感染症に引き下げられて、8日で1年がたちました。感染対策は個人の判断となり、治療薬やワクチン代を国が負担する制度も今年3月末で終わりました。
去年の夏ごろに流行の第9波、今年1~2月ごろには第10波がありました。感染対策は引き続き必要です。感染動向は、決められた医療機関からの週1回の報告や、下水中のコロナウイルス量調査などを組み合わせて把握します。
最近では小さい子どもの間で、溶連菌やRSウイルスなどの感染症が増えています。コロナ感染対策により、病原体に対して免疫が得られなかった影響がありそうです。
(朝日小学生新聞2024年5月17日付)

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