開業すれば東京―大阪が67分 工事には課題山積み

Q どういう新幹線なの?

A 磁石の力で10センチうかび、時速500キロで走る

解説者 細澤礼輝 朝日新聞東京本社社会部

いま国内で最も速い新幹線は東北新幹線「はやぶさ」の最高時速320キロ。東京と新大阪を結ぶ東海道新幹線「のぞみ」は285キロです。一方、リニアは500キロで走ることができます。

のぞみの場合、東京から名古屋まで1時間33分、新大阪まで2時間21分かかりますが、リニアだと品川から名古屋まで40分、大阪まで67分と、どちらも半分ほどに縮まります。また、大地震が起きて東海道新幹線が走れなくなった際、リニアが代わりの「バイパス」となることも期待されています。

速さの秘密は磁石の力でうかんで走ることにあります。新幹線などの鉄道はレールの上を車輪で走りますが、速度が上がりすぎると車輪が空回りしてしまいます。

一方で、リニアはレールがなく、「ガイドウェイ」と呼ばれるU字形の走行路を走ります。車両とガイドウェイの側壁には強力な磁石が取り付けてあり、磁石どうしが反発したり、引き合ったりする力を使って、時速約150キロをこえると10センチほどうき上がって走ります。

最新型車両「L0系」の細長い先頭部にはカメラ用の小さな窓があるだけで、運転席はありません。運転士は乗っておらず、はなれた場所からコントロールする自動運転のしくみとなっています。

品川―名古屋間の286キロのうち86%がトンネルで、都市部では地下40メートルをこえる「大深度地下」を通ります。品川と名古屋の間には、神奈川、山梨、長野、岐阜各県に途中駅ができます。

Q いつになったら乗れるの?

A 目標だった2027年開業は断念、34年以降の見通しに

解説者 細澤礼輝 朝日新聞東京本社社会部

リニアの工事は2014年に始まりました。計画では27年に品川―名古屋間で開業し、早ければ37年に大阪まで全線開業するはずでした。ところが、リニアを建設するJR東海は今年3月、27年開業をあきらめると発表しました。

最大の理由は、山梨、静岡、長野3県にまたがる南アルプストンネル(25キロ)のうち、真ん中の静岡工区(8.9キロ)の工事を始められないためです。計画では17年に始まる予定でしたが、静岡県は大井川の水量が減ったり、南アルプスの自然環境に悪い影響が出たりするおそれがあるとして、着工を認めていません。

南アルプストンネルは、地表からの深さが最大1400メートルにも達し、リニア工事の中で最も難しいとされています。工期は10年かかるとみられ、すぐに着工できてもリニア開業は34年以降にずれこむ見通しです。

最近のNEWS

静岡では工事推進派の知事に交代

静岡県では今年5月に知事選挙があり、15年ぶりに知事がかわりました。前の知事は環境への影響があるとして静岡工区でのリニア着工を認めませんでしたが、新しい知事は「推進」の立場。工事が進むのではないかと注目を集めています。

一方で、岐阜県瑞浪市のリニア工事の現場周辺では2月から、井戸やため池の水がかれる現象が発生。JR東海はトンネル工事との関連を認め、5月になって工事を中断しました。長野県や山梨県でも、高架橋や駅建設工事の完了見こみが2031年にずれこむケースが出てきていて、静岡工区だけが開業おくれの原因とはいえないようです。

■解説者 細澤礼輝 朝日新聞東京本社社会部

(朝日小学生新聞2024年8月9日付)