中学受験の勉強は特殊です。場合によっては中学や高校の勉強よりも難しいかもしれません。算数は5年生になると、多くの親が解けません。勉強が得意なお父さんがトライしても、たいへんな時間と労力を費やして解けるかどうかで、塾の先生のようにスマートにはいきません。

中学受験の理科も難易度が上がりました。例えば天体では地球、月、太陽、金星の位置を把握する必要があります。はたして普通の大人が、金星が地球の内側を公転していることや太陽と月と地球の位置関係を、子どもにうまく教えられるでしょうか。

子どもが「お母さん、ここ教えて」とたずねてくることがあるでしょう。お母さんも始めは、塾のテキストを見るなりネットで調べるなりして一緒に考えますが、どうやってもわからない問題につきあたる時もあります。そのような時は「お母さんもわからない。塾で先生に聞いてきなさい」くらいで、良いのです。本当に中学受験は特殊ですから。

逆に子どもが「お母さんはこの問題出来るの?」と、えらそうに試してくるかもしれません。その場合は、「出来ません。大人のお母さんは解けなくても、受験生のあなたは解けないといけません。」で、良いのです。大人と受験生を一緒にするのは間違っています。

「大人は大人。家事、仕事をしています。子どもは勉強するのが本領。一緒にしたらダメ。」
で、十分です。太平洋側と瀬戸内側の雨温図の違いをきちんと説明できなくても、親が卑下する理由は全くありません。

子どもは親を見ています。知らず知らずのうちに感化を受けているものです。だから子どもが「お母さんは、立体図形の切断の問題が出来るの?」などと聞いてくるのは、自分は家でいつも勉強しているのに……という心理があるからかもしれません。

ますます特殊化する中学受験、勉強を教えることが出来なくとも、何かしら頑張っている親の後ろ姿を見せることで、子どもの背中を押せるのではないでしょうか。

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(朝日小学生新聞2024年9月18日付)