この記事は、2006年8月5日付の朝日小学生新聞に掲載されました。記事の内容は、新聞に掲載したときのものです。

中東のレバノンという国にイスラエルという国の軍隊がせめこんだというニュースを最近よく見るけど、なぜ攻撃しているの?

高原記者

イスラエル軍はレバノンを爆撃したり、地上部隊がせめこんで占領したりしている。イスラエルとにくみあっているイスラム教シーア派の武装集団「ヒズボラ」の拠点(活動の中心地)をこわして、追いはらおうとしているんだ。

なぜ、いま攻撃しているの?

高原記者

きっかけは、ヒズボラがイスラエル兵を誘拐したこと。ヒズボラの指導者は「兵士をかえしてほしければ、イスラエルの刑務所にいるレバノン人らを釈放しろ」といい、イスラエルがおこったんだ。

イスラエルが武装集団「ヒズボラ」をつぶそうと

レバノンは宗教のるつぼ 繰り返される内戦や戦争

ヒズボラって?

――アラビア語で「神の党」っていう意味なんだ。レバノン人たちが1982年ごろ結成したイスラム教シーア派の過激集団で、戦闘部隊もある。同じイスラム教徒が多いイランやシリアと親しく、援助してもらっているといわれている。一方、ユダヤ教徒の多い国イスラエルは軍隊が強く、中東のイスラム教の国々と仲が悪い。ヒズボラと長年対立してきたんだ。

レバノンとイスラエルはどういう関係なの?

――イスラエル軍は1982年にもレバノンにせめこんだ。イスラエルと対立していたパレスチナ解放機構(PLO)のゲリラを追い出すためだったけど、その後はヒズボラをやっつけることに執念をもやしてきた。イスラエル軍は2000年までずっとレバノンの領土にいすわっていたんだよ。

レバノンって、あらそいごとが多い国なの?

――いろんな宗教の信者が住んでいる国で、七五年にはキリスト教やイスラム教の民兵軍団と、PLOがあらそう内戦になった。そこにイスラエル軍もせめこんで戦争に。長い戦いやテロで大勢の人が死んだんだ。

ヒズボラもくわわっていたの?

 ――ヒズボラは自爆テロなどでイスラエルとはげしく戦った。イスラエル軍は被害が多く、レバノンから撤退せざるをえなくなったんだ。だからいまも目のかたきにしている。

空爆で子どもらも犠牲に 国際社会は停戦よびかけ

ヒズボラって、テロ集団?

――アメリカはレバノンの大使館を1983年に爆破されたことから、「ヒズボラはテロ組織だ」と悪者あつかいしてきた。一方で中東のイスラム教国には応援している人が多い。

ヒズボラはレバノン人らの組織だけど、レバノン政府は何してるの?

――兵士誘拐でイスラエル政府はレバノン政府におこったけど、レバノン政府は「ヒズボラの攻撃を知らなかったし、みとめてもいない」といっているよ。

イスラエル軍の攻撃は世界にどう思われてるの?

――兵士を誘拐されたからといって攻撃したことに国際的な批判が集まっている。子どもたちをふくめて罪もないレバノンの人が空爆で大勢死んでいるし、ヒズボラもロケット弾をイスラエルにうち返していて、イスラエル人の死者も出ている。さらにイスラエルは国連の施設まで爆撃し、4人の命がうしなわれた。理由ははっきりしないが、国連は「わざとだ」と、おこっている。

だれか止める人はいないの?

――多くの国がイスラエルに「攻撃をやめて」とたのんでいる。世界でもっとも力を持つアメリカはイスラエルと親しくて、「悪いのはヒズボラだ」といっていた。だけどあまりにも死者が多くなってきたので、各国が部隊を派遣してイスラエルとヒズボラの間にわって入ることを検討しているよ。早くそうなるといいね。

高原 敦 記者(朝日新聞外報部)

(朝日小学生新聞2006年8月5日付)