自民党の総裁選挙を経て、総理大臣(首相)が選ばれました。解散・総選挙で注目されるのが、世論調査と情勢調査です。

有権者の意思 政治に届ける手段の一つ
Q 世論調査とは、どのようなもの?
A 社会や政治に対する有権者の意見を調べる

世論調査は、人々が政治や社会に対しどのような意見を持っているかを調べるものです。報道機関が実施する世論調査では、18歳以上の有権者を対象にしています。
有権者はいま約1億人いますが、全員に意見を聞いていてはものすごく時間や手間がかかります。世論調査では有権者の中から、1千~3千人程度をぐうぜんにまかせて選び、意見を聞きます。
この「ぐうぜんにまかせて選ぶ」が重要となります。サイコロやくじ引きのように「だれもが等しい確率で選ばれるような選び方」で「有権者の縮図」を作ります。この「縮図」の人たちの意見を調べることで有権者全体の意見がだいたいわかる、という仕組みです。
朝日新聞社では、ぐうぜんにまかせて選んだ固定電話と携帯電話の番号に対し、調査員が電話をかける方法で毎月、世論調査を実施しています。
では、なぜ世論調査が大事かというと、世論調査には、民主主義をおぎなう役割があるからです。
有権者が政治に意思を反映させる最大の手段は選挙です。しかし、選挙の機会はひんぱんにはありません。政策テーマごとに毎回、国民投票をするわけにもいきません。
世論調査は、政権が進める政策や社会の問題について有権者はどう考えているかを調べ、政治の世界に届ける重要な役割があります。
内閣支持率など政治に関することに限らず、物の値段など身近な暮らしについて聞く調査も行っています。

Q 情勢調査は何のために行う?
A 選挙でどの政党がのびそうか、だれが優勢かを予測する

情勢調査は、選挙でどの政党がのびそうか、候補者のだれが優勢かを予測するものです。ただ、世論調査と違って結果をそのまま報じることはありません。調査時点でまだ投票先を決めていない人や投票に行かない人もふくまれるため、調査結果が選挙結果と同じにならない可能性があるからです。
朝日新聞社では、電話調査のほか、衆議院議員選挙や参議院議員選挙ではインターネット調査も組み合わせて、選挙区ごとに予測をしています。
情勢調査の結果を報道するのは、選挙情勢の客観的な情報が、有権者の投票態度を決めるうえで、検討材料の一つになるからです。
政党も独自に情勢調査を行いますが、その情報は公表しません。報道機関の情勢調査はこうした情報の不均衡を解消し、国民の「知る権利」を守る意義もあります。
みなさんが有権者になったら投票先を考える材料の一つとして活用してみてください。
メモ
GHQが伝授 「ぐうぜん」の大切さ
日本の世論調査は戦後、本格的に始まりました。朝日新聞社に世論調査の部署ができたのは1945年11月。当初は調査方法がよくわからないまま、46年に20万枚もの大量の調査票を全国で配布する調査を実施しました。
その結果を報道した紙面をみた連合国軍総司令部(GHQ)の民間情報教育局世論調査課長だったハーバート・パッシンさんが朝日新聞社を訪問。調査で票数の7割を男性、3割を女性に割り当てたり、東京都だけ人口統計の割合よりも多く票を配分したりしていた点などを「欠陥だ」と厳しく批判しました。この訪問から、調査の対象となる人をぐうぜんにまかせて選ぶ重要性を知ったそうです。
■解説者
江口達也
朝日新聞世論調査部記者
(朝日小学生新聞2024年9月27日付)

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