
元朝日新聞編集委員が解説
27日に投開票される衆議院議員選挙。今日と明日の紙面で、注目のポイントや選挙のしくみを紹介します。まずはこの選挙の争点や、石破茂首相の政権ができたばかりなのに早くも選挙になった理由について、元朝日新聞編集委員の国分高史さんが解説します。
多様な生き方への考えも各党でちがう
最大のポイントは、裏金のような「政治とお金」の問題への対応です。2012年から自由民主党(自民党)と公明党の政権が続き、自民党の議員に「いいかげんなことをしても大丈夫」といった気のゆるみがあったことが不祥事につながったのは明らかです。野党は会社や団体から政党に寄付することを禁止するなど改革をうったえていますが、自民党はそこまでする気が今のところないようです。
自民党と多くの野党でもう一つちがうのは、選択的夫婦別姓の制度など、多様な生き方を認めるかどうかの政策です。石破さんも総裁選挙では選択的夫婦別姓制度に賛成の考えでした。ただ、自民党では反対の議員が多く、石破さんは党内の意見をまとめ切れていません。一方で、立憲民主党などの野党は賛成しています。

自民党 「新鮮さが有利」と急いで解散・総選挙
政権ができたばかりで選挙をする理由について、石破さんは「できるだけ早く国民の審判を受けるのが重要だ」と説明しています。内閣や自民党の役員の顔ぶれが変わったのだから、国民が評価する機会をなるべく早く設けるべきというのは、政治のあり方としては正しいです。
ただ、首相になってひと月もたたないうちというのは、早すぎます。急いだ本当の理由は、新鮮さがあるうちに選挙をしたほうが自民党に有利だと、自民党のほとんどの議員が思ったからです。
裏金問題では、前首相の岸田文雄さんは調査を行い、関係した議員の処分、再発を防ぐ法律改正を進めました。ところが、国民の納得を得られる内容ではなく、内閣や自民党の支持率は低くなっていました。
ところが、9月に行われた自民党の総裁選挙は候補者が9人も出て、ニュースでたくさん報じられました。こうした「お祭りさわぎ」によって、不祥事で生まれた自民党への悪いイメージが少し弱まったように見えたのが、早い選挙につながりました。
裏金問題
政治資金を集めるために開く自民党の派閥のパーティーで、得たお金が正しく報告されず、自由に使える「裏金」として派閥に属する国会議員の手にわたった事件。議員や秘書などが逮捕され、多くの派閥が解散することになりました。
選択的夫婦別姓
夫婦が望む場合、それぞれ結婚前の姓を名乗るのを認める制度。今の日本のルールでは、夫婦は同じ姓にする義務があります。
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▶一票の格差
選挙区によって有権者数が異なり、一人の議員を当選させる票の重み(価値)に差が出る「一票の格差」。日本国憲法第14条は「法の下の平等」をうたい、その解消が求められています。
今回から小選挙区の定数を見直し、5都県で計10増え、10県でそれぞれ1減って「10増10減」に。比例代表も5ブロックを対象に「3増3減」になりました。

(朝日小学生新聞2024年10月23日付)