
みなさんがある日、学校のろうかでピンクのハートもようのハンカチを拾ったとします。ハンカチの持ち主はどんな人を思いうかべますか? 私たちは何かを見たり、聞いたりしたとき、他人や自分自身への「無意識の思いこみ」を持っていることがあるそうです。(奥苑貴世)
だれにでもありうる、正しく知って
無意識の思いこみを「アンコンシャスバイアス(略してアンコン)」と呼びます。2013年ごろから世界や日本で、会社の組織づくりなどの面から注目され始めました。
例えば、ある上司が女性社員に対し「小さい子どもがいるから、出張の仕事をはずしてあげよう」と、本人の意見を聞かずに決めたとします。「子どもがいる女性社員は出張に行きたくない」という思いこみによるものです。もしかしたら、女性社員は出張に行きたいと思っているかもしれません。
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アンコンに気づくことの大切さについて、アンコンシャスバイアス研究所(東京都港区)は会社などに広める活動をしています。「大人だけではなく、子どもたちにこそ正しく知ってほしい」と考え、21年から、小中学校の授業や子ども向けのイベントも行っています。
理事の太田博子さんは「アンコンは他人に対して持つものと、自分に対して持つアンコンがあります」と説明します。
相手をきずつけることや、自分の可能性をせばめることも
アンコンの例は、性別に関するものだけではありません。「めがねをかけている人は、みんなまじめだ」「はだや髪の色が自分とちがう人は外国出身だ」などと、無意識に思ったとします。みんなそうとは限らないのに、それまでの経験やイメージが影響しているケースです。
太田さんは「無意識に思うことは、だれにでもありうるもの。ごく自然なことです」と言います。「でも、思いこみから生じる言葉や行動で、相手をきずつけてしまうことがあるかもしれません」
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自分に対するアンコンもあります。「『ぼくにはこれは無理だろう』『私は〇〇が苦手』『どうせ聞いてもらえない』などと思って、意見や気持ちを言えなくなったり、自分の選択肢や可能性をせばめたりすることもあります」
思いこみに気づくには?
アンコンに気づくため、太田さんがおすすめするのは次の三つです。
- 「普通はこうだ」「みんなそうしている」と決めつけない
- 他人とちがうことはまちがいではない。だれかや何かと比べない
- 自分の可能性を信じる
小学校で太田さんたちがアンコンの授業をすると、子どもたちからさまざまな声があがるといいます。「けんかをして、相手が悪いと思っていたけれど、アンコンだったかもしれないと気づいた。ごめんねと言えた」「『世界一になるのは無理』だと思うのもアンコンだと気づいた」などです。
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