
累計発行部数7万部突破「たくや式」英語問題集シリーズの著者・藤井拓哉さんが、家族でのアメリカ生活や家庭での英語学習についてつづります。
"I don’t care!"(どうでもいいよ!)
怒った小学4年生の長男が英語で言い返してきた。「今まであまり言い返すことがなかったのに・・・そうか、成長したんだな・・・いや、そっちじゃない。え?英語!?アメリカの学校に通い始めてまだ3か月しか経っていないのに!マジか・・・」。日本語よりも英語が出るようになった長男の成長に驚いた。
さらに小学1年生の次男は、学校に通い始めてすぐに “What’re you doin’, bro!?”(何してんだよ!? <*broは、brotherの短縮形で「兄弟」「友達」「仲間」を意味する>)という表現を覚えてきて、家の中ではみんなが次男の「bro」になっていた。
うちの子どもたちが通っている学校には日本人がほとんどいないため、英語が伸びるスピードも早いとは思っていたが、まさかこんなに早いとは・・・
こうして、アメリカでの子育てが始まった。
現地の学校に通えなくなってしまう場合も・・・
しかし、藤井家の子どもたちはレアなケースなのかもしれない。日本人駐在員からは「うちの子どもたちは現地校になかなか馴染めなくて・・・」という話をよく聞く。学校にそのまま通い続けられたら御の字。生徒によっては、カウンセリングを受けたり、登校拒否になってしまったり、母親と子どもたちだけが日本に帰国するケースもある。それだけ「英語の壁」は高く、先生やクラスメイトとコミュニケーションが取れないことによって感じる孤独は辛い。またアメリカの学校の場合、自己主張が強い子どもが多いことから、比較的おとなしい日本人の子どもが意地悪をされることもよくある。特に、「言った・言わない」「やった・やらない」といった証拠のない水掛け論になった場合、アメリカ人の子どもが非を認めることはまずない。
このような理由により「子どもたちが安心して通える学校」を求めて日本人が多く住む地域に駐在する家庭も少なくない。
では、なぜ藤井家の子どもたちはすんなり現地校に溶け込むことができたのだろうか? 性格? それもあるだろうが、おそらく日本で行っていた「たくや式 バイリンガル教育」が何かと役に立ったのではないかと考えている。

日本という国ではやっぱり英語ができることが武器になる
そもそもなぜバイリンガル教育をしようと考えたのか? それは、現代の日本社会では、(良い・悪いは別として)英語ができることが一つの武器になるからだ。子どもの習い事ランキングでは「英会話」が上位に入り、経済的に余裕のある家庭では子どもをインターナショナルスクールに通わせるということもよくある。幼少期から楽しく学べる英語教材には何十万円という価格がつけられ、英検に合格していたりTOEIC L/Rで高得点を取得していることが受験や就職において有利に働くこともある。
確かに、この傾向に異議を唱える人も少なくない。「何を考えている! 日本人なら日本語だろ! 第一言語である日本語をまともに習得していない子どもに第二言語である英語を学ばせるなんて言語道断!」という意見もよく耳にする。しかし、日本では英語が話せるだけで「すごい!」と評価されることが多いのも事実だ。何を隠そう、私も帰国子女で発音がちょっとだけアメリカ人ぽいということだけで随分と得をさせてもらった。使っている単語や文法は中学生レベルであっても発音がアメリカンなのでそれっぽく聞こえてしまう。更にアメリカの大学・大学院まで出ているものだから、日本に帰国してからは大学で英語を指導するということまでさせてもらえた。幼い時に英語を学んだおかげ。何ともありがたい話だ。
実践したのは、ごく一般的な「バイリンガル教育」
しかし、だからと言って第一言語(日本語)の重要性を否定しているわけではない。そのため、たくや式バイリンガル教育は「子どものうちからガッツリ英語を学ばせるのではなく、英語が日常に自然に存在する環境作り」を基礎としている。
では、具体的に何をしたのか? 正直、大したことはしていない。藤井家で実践していたのは次の4つだけである。
(a) 基本的に子供が視聴するのは、英語のDVDやYouTube
(b) 家の中・車で聴くのは、英語の歌
(c) 本の読み聞かせも、英語と日本語
(d) 父親が話しかける時は基本的に英語、母親が話しかける時は日本語
おそらく、特に驚くような内容ではないだろう。しかし、私の経験から言って、「バイリンガル教育の成功」を大きく左右するのは、何をやるかという「内容」よりも、「どれだけ親がコミットできるか」だと感じている。詳しくは次の回で。

藤井拓哉(ふじい・たくや)

1984年生まれ。父親の都合で3歳~6歳までと、15歳~24歳までをアメリカのオハイオ州で過ごす。オハイオ州立大学、同大学院で教育学を学び、日本語の教員免許とTESOL(英語を母国語としない方のための英語教授法)を取得。帰国後は、宇都宮大学で英語講師を務める。数学、化学、生物学、物理学を英語で学ぶ「理数系英語」の講義を定期的に行い、2010年と2013年に学生による「授業評価アンケート」をもとに選ぶ「ベストレクチャー賞」を受賞。その後、上智大学、筑波大学などで英語講師を務めた後、2023年から家族でアメリカ暮らしを始める。著書に『たくや式中学英語ノート』シリーズ(朝日学生新聞社)、『MP3CD付き ガチトレ 英語スピーキング徹底トレーニング』シリーズ(ベレ出版)。TOEIC955点、TOEFL101点。
「たくや式中学英語ノート」全10巻
【著者によるYouTubeビデオ講義付き】

中学英語の基本を学年別・単元別に学ぶ、書き込み式薄型問題集シリーズです。
「中学生のときに英語が本当に苦手だった」と自認する著者がつくるテキストは、英文法を基礎の基礎から丁寧に解説し、豊富な問題で繰り返し英文を書かせるのが特徴です。前に習ったことの復習が何度も出てくるので、自分の弱点を知って、正しい英語を身につけることができます。
「たくや式 どんどん読める 中学英語長文」全4巻
【著者によるYouTubeビデオ講義付き】

学年別の単語・文法を使ったオリジナル長文(会話文・メールの文章・ブログの文章・講義など)を各巻11話収録。どの学年の方も、無理なくどんどん長文が読める仕組みになっています。定期テストや入学試験でよく出題される穴埋め問題や、文脈把握問題のほか、たくや式ならではの、「英語の文法を自分の言葉で説明できるか」を問うたくさんの問題を収録。
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