はたらく微生物、人間は「お世話」が仕事

茨城県大洗町で160年近く続く「月の井酒造店」は、お酒をつくる酒蔵と酒屋がひとつになった「造り酒屋」です。日本酒の「寒造り」のシーズンをむかえて、酒蔵は大いそがし。杜氏と呼ばれるリーダーの石川達也さん(60歳)と4人の蔵人が毎日、朝早くからはたらいています。

月の井酒造店=11月、茨城県大洗町

材料の米と水をお酒にするのは、こうじ菌などの目に見えない微生物たち。杜氏と蔵人は、そのお世話をしているのです。「お父さんやお母さんが、昼も夜も赤ちゃんのめんどうを見るのと同じです」と石川さんは説明します。

人が手作業で心地よい環境を整えると、微生物たちは元気になって仲間を増やします。やがて、米のでんぷんを糖に変える活動と、糖をアルコールに変える活動が始まります。これらを「発酵」といいます=「日本酒の伝統的なつくり方」を見てね。

異なる発酵を同時に進める酒づくりは世界的にみてもめずらしく、高い技術力が求められます。

気候や風土を生かし、育んできた技術

微生物の存在を知らなかった昔の人たちは、どうしてお酒ができるのかふしぎに思ったことでしょう。日本各地の気候や風土を生かし、長い年月をかけて育んできた技術には「先人の知恵がつまっている」と石川さん。「酒づくりは『自然を相手にする』のではなく、『人間も自然の一部』となってはたらく仕事です」

科学技術が進歩して、いまはさまざまな酒づくりの方法があります。それぞれによさがありますが、石川さんは、なるべく自然に近い環境で微生物たちにたくましく発酵させるつくり方を続けています。

めざすのは、毎日食べる白いごはんのようなお酒です。「飲むと料理がおいしくなり、だれかと話したくなる。人の体になじんでくらしに寄りそい、生きる力がわく酒をつくりたいです」

調べ学習のヒント
 こうじ菌を使った食品は、ほかにどんなものがあるかな。記事の続きを読むとわかるよ。それらは、どうやってつくるのか調べてみよう。

伝統的酒造り

 杜氏や蔵人などが、各地の気候や風土にあわせて育んできた手作業の技術。日本酒や焼酎、泡盛、みりんなどをつくります。お酒によって米や麦などを使いますが、ほかにはこうじ菌と水しか足しません。ユネスコは、お祭りや婚礼などに欠かせないお酒をつくる技術は、日本文化に深く根ざしていると評価しました。

日本酒の伝統的なつくり方

1 蒸米をつくる
 精米した酒米を洗い、水を吸わせて蒸す

佐古修平さん提供

2 こうじをつくる
 温度を30~35度にした「こうじ室」という部屋で、蒸米にこうじ菌の胞子をふりかける。2日かけて育てると、米のでんぷんを糖に変える酵素が生まれ、こうじになる

佐古修平さん提供

3 酒母(酒のもと)をつくる
 おけのなかで蒸米、こうじ、水をすりあわせると、発酵を担う微生物たちが育ちやすい環境が整う

佐古修平さん提供
佐古修平さん提供

この記事は有料記事です。

デジタル版をご購読いただくと、記事の続きをお読みいただけます。

今すぐ登録(キャンペーン実施中)

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

ログインする

購読のお申し込み

紙の新聞版

朝日小学生新聞

2,100
月額(税込み)

申し込む

お試しを申し込む

サンプル紙面

朝日中高生新聞

1,200
月額(税込み)

申し込む

お試しを申し込む

サンプル紙面

デジタル版

朝小プラス

1,900
月額(税込み)

申し込む

デジタル版の紹介

朝中高プラス

1,050
月額(税込み)

申し込む

デジタル版の紹介