
能登半島地震からまもなく1年
元日に起きた能登半島地震からまもなく1年です。石川県珠洲市に住む井田旭陽さん(4年)は、避難生活をした経験から避難所のトイレについて研究。その成果が認められ、トイレにかんする優れた取り組みにおくられる「日本トイレ大賞2024」の特別賞を受賞しました。研究を通して、備えの大切さを伝えます。(正木皓二郎)
避難生活で感じた不便さきっかけに
井田さんの研究は、災害が起きたときに問題となるトイレ環境に対して、災害用トイレの効果や課題を小学生の視点で探究した点などが評価されました。
1月1日は井田さんの9歳の誕生日でした。家族で集まってお祝いをしてからしばらくのこと、震度6強の大きなゆれにおそわれました。

30分くらい後には津波が家の前までおし寄せたといいます。幸い家も家族も無事でしたが、水が使えなくなり、近所の高校で2週間ほど避難生活を送りました。高校でも水は使えず、最初の3日ほどは仮設トイレもありませんでした。「高校のトイレはくさくて大変だった」と井田さんはふり返ります。
数日後、少ない水で流せる仮設トイレを使えるようになりましたが、においの問題は続きました。2週間後には電気が回復し、井田さんと家族は自宅にもどることに。家の便器にふくろをしいて用を足す日々をおくりました。
当時物資は十分でなく、ペットの尿を吸収するトイレシーツを半分に切って役立てたそうです。水が使えるようになったのは、およそ3か月後。水が通ったときは「うれしかった」といいます。
1月の終わりごろには、井田さんが通う小学校にもトイレカーがやってきました。トイレカーとは、水洗式のトイレを積んだ車です。実際に使って「トイレカーのほうが良い」と感じました。

市内30か所まわりトイレを取材
もともとトイレのしくみに興味があったという井田さん。避難生活をへて、トイレへの興味を強めました。
3月ごろから、避難所や学校などで使われているトイレを調べ始めます。市内約30か所をまわって、タイヤがついたタイプやコンテナ型のトイレなどを写真におさめました。「どの仮設トイレが好きですか?」と友だちや避難している人などにアンケートし、その結果もまとめました。

研究は「うまくできた」と手応えを感じています。11月に「日本トイレ大賞2024」の授賞式がオンラインであり、研究の成果を発表しました。
新たな研究も始めています。トイレのしくみと復興に向けて活動する人や施設を「ふっこうノート」にまとめていく予定です。「トイレはやっぱり大事。トイレカーがたくさん来て助かった」と井田さん。災害が起きたときには、トイレが使えなくなることも想定して「日ごろから備えてほしい」と話しました。
(朝日小学生新聞2024年12月28日付)

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