産業技術総合研究所が開発

ミドリムシ由来の接着剤をつくったのは、産業技術総合研究所(産総研)の芝上基成さんたちの研究チームです。芝上さんはこれまでにミドリムシ由来のプラスチックやせんいもつくっていて、その技術を応用しました。

接着剤の原料は、ミドリムシが体にためこむ「パラミロン」という物質。ミドリムシの体重の半分以上をしめます。2千個ほどのブドウ糖がつながったもので、「ラクダのこぶ」のように、栄養をたくわえておく役割を果たします。

このパラミロンに、ココナッツオイルにもふくまれる「脂肪酸」を加えると、つるつるのシート状の接着剤ができます。アイロンなどで温めるととけて、くっつける物の表面の細かな溝にしみわたります。それが冷えるとぎゅっとかたまり、いくら引っ張ってもとれません。

この接着剤でアルミニウムの板どうしを25ミリ×5ミリの面積でくっつけて実験したところ、380キロ(シロクマ1頭分ほど)までの重さにたえられました。これは高い安全性が求められる自動車や航空機の部品に使われる接着剤に負けない性能です。

産総研提供

くっつく力で世界最高クラスの性能を発揮するミドリムシの接着剤には、「はがしやすい」良さもあります。

くっつけた物を、家庭用のオーブンでも出せる数百度の熱で温めると、接着剤がとけて解体できます。でも、100度くらいの熱には問題なくたえられます。エンジンのそばなどでない限り、自動車や航空機に使っても、ばらばらになる心配はないそうです。

はがしやすさも実現

研究チームで接着の検査をになう寺崎正さんによると、「くっつける力が強いと二度とはがせない」というのが、接着剤の世界の常識。ミドリムシの接着剤は「強くくっつくけれど、はがしやすい」という、「不可能」にも思えることを実現しました。

ヨーロッパを中心に、買った物を「修理できる権利」を守る動きが広がっています。そこで「はがしやすい接着剤の開発がさかんになっている」と寺崎さん。そんな世の中の流れに、ミドリムシでいどもうとしています。

ミドリムシは健康食品の成分や、車や飛行機の燃料としても近年、注目されています。どの使い方でも、かぎをにぎるのがパラミロンです。

この記事は有料記事です。

デジタル版をご購読いただくと、記事の続きをお読みいただけます。

今すぐ登録(キャンペーン実施中)

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

ログインする

購読のお申し込み

紙の新聞版

朝日小学生新聞

2,100
月額(税込み)

申し込む

お試しを申し込む

サンプル紙面

朝日中高生新聞

1,200
月額(税込み)

申し込む

お試しを申し込む

サンプル紙面

デジタル版

朝小プラス

1,900
月額(税込み)

申し込む

デジタル版の紹介

朝中高プラス

1,050
月額(税込み)

申し込む

デジタル版の紹介