核兵器を持つ、使う、「使うぞ」と脅す、などを禁止した「核兵器禁止条約」。この条約を結んだ国々の会議が3月、アメリカにある国際連合(国連)本部で開かれます。

Q 核兵器禁止条約は、どんな条約なの?
A 世界から核兵器をなくすためにつくられた

条約がつくられるきっかけは、2010年、赤十字国際委員会が「核兵器は非人道的な(悪の)兵器であり、いかなる場合にも使うべきではないし、なくさなければならない」との声明を出したことでした。各地で核実験をし、核兵器を持つアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国が「核兵器をなくす」という約束を守らないからです。
これを受けて、スイスなど16の国が12年に「核兵器の非人道性に関する共同声明」を発表。翌年の4回目の声明には、日本をふくむ125か国が賛成しました。13~14年には、核兵器の非人道性について話し合う国際会議も3回開かれ、広島・長崎の被爆者や世界各地の核実験被害者たちが証言。核兵器を国際法で禁じようという機運が高まりました。
条約は、国連で提案された案が17年7月に122か国の賛成で認められ、参加する国が50をこえた21年1月に発効しました。
条約の前文には「核兵器が二度と使われないようにするには、核兵器をなくすしかない」として、広島・長崎で原爆の被害にあった人たちを指す「被爆者(hibakusha)」の言葉を盛りこんでいます。
さらに、核実験による放射能でよごれた地球の環境を元にもどすことも義務づけています。

Q 条約の会議では、どんなことが話し合われるの?
A 世界の核被害者をどう助けるかや、その資金について

今年3月には条約を結んだ国々による3回目の会議がアメリカ・ニューヨークの国連本部で開かれます。世界の核被害者をどうやって助けるのか、そのための資金をどうやって集めて配るかが話し合われます。
24年12月時点で、73か国・地域が条約に加わっています。ただ、その中に日本は入っていません。
不参加の理由について、日本政府は「核兵器を持つ国々に囲まれている日本は、アメリカの核兵器の抑止力(敵に攻撃を思いとどまらせる力)に守られているから安全でいられる。だから今は、核兵器を禁止するための条約には参加できない」としています。
ただし、まだ条約に参加していなくても会議に立ち会い、意見を言うことはできます。
被爆者を医療面で助けたり、東京電力福島第一原子力発電所の事故によって放射能に汚染された環境を元通りにしようと取り組んだりしている日本政府に、条約の会議の話し合いに参加してほしいという声が高まっています。

最近のニュース
核兵器の使用 危ぶまれるいま 日本被団協に平和賞
核兵器禁止条約が成立するのに貢献したなどとして、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が2017年にノーベル平和賞を受賞したのに続き、広島・長崎の被爆者たちでつくる日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が24年の平和賞を受賞しました。
ノーベル委員会は賞をあたえる理由で「核兵器のない世界の実現に努め、核兵器が二度と使われてはならないことを証言を通じて示してきた」と評価。紛争が続く世界で、また核兵器が使われるかもしれないという強い危機感を示しました。また、約80年前にアメリカ製の2発の原爆が広島・長崎で多数の命をうばい、その後も放射線による被害が続く事実にもふれました。
■解説者
田井中雅人
朝日新聞記者
核と人類取材センター事務局長
(朝日小学生新聞2025年1月17日付)

「朝小プラス」は朝日小学生新聞のデジタル版です。毎日の読む習慣が学力アップにつながります。1日1つの記事でも、1年間で相当な情報量に!ニュース解説は大人にもおすすめ。