
日本の経済を支える会社が集まる「日本経済団体連合会」の会長が5月に代わります。「経団連」と呼ばれることが多いこの組織、どんな役割を果たしているのでしょうか。
大企業が中心 時代の変化にはおくれがち
Q どんな団体?
A 経済界の意見まとめ、国に提言

経団連は、大きな会社(大企業)を経営する社長や会長が会員となってできた団体です。日本の経済や社会が発展するよう意見をまとめたり、政府に提言をしたりします。この団体のトップである会長が5月末に、住友化学の十倉雅和さん(74歳)から、日本生命保険の筒井義信さん(71歳)に代わることになりました。

経団連は第2次世界大戦が終わって間もない1946年に設立されました。戦後、日本の経済を立て直すため、多くの会社が協力し合う必要があったからです。
それから80年近くの間、日本の経済が成長する中で、役割も変わってきました。昔は「会社がもうけを出すこと」を最も大切にしましたが、最近は「環境に優しい経済」「女性や外国人が活躍できる社会」「デジタル技術の発展」などの実現にも力を入れます。政権をになう与党の政策を評価し、政治活動にお金を出す「献金」を呼びかけることもします。
経団連があることで生まれる良い点は、会社どうしが情報を共有しながら、日本全体の経済を良くするために協力できることです。政府と話し合う窓口となることで、経済界の意見を国の政策に反映しやすくなります。
一方で、良くない点も指摘されています。大企業中心の団体であるため、中小企業や一般の人々の意見は、経団連を通じては反映されにくいといわれます。たとえば、会社がはらう法人税の減税はすぐに決まるのに、私たちのくらしに直接影響する消費税や所得税などの減税は、なかなか実現しないといった具合です。
また、「経団連の考え方は古いのでは?」という声も。時代の変化に対応するのがおそいという批判も受けています。

Q どんな人が会長になるの?
A 時代を代表する業界から選出

経団連の会長は、日本を代表する大企業のトップが選ばれます。日本経済のリーダーとして、さまざまな問題に意見を出します。任期は2期4年。これまで会長を務めたのは15人で、すべて男性です。
かつては鉄鋼や電力など、日本の工業を支える会社の人が目立ちました。戦後の日本では、工業の発展が経済成長にとても大切だったからです。
その後、時代とともに出身の業界が移り変わっています。特に1990年代からは、自動車や化学製品をつくる製造業から選ばれることが増えました。日本が「ものづくりの国」として、世界で活躍してきたからです。
5月末に第16代の会長になる筒井さんは、金融業界から初めて選ばれました。株式を市場で公開していない「非上場会社」出身であるのも例のないことです。
メモ
経団連もふくめた「経済3団体」
日本には、経団連以外にも経済にまつわる会社や経営者の団体があります。中でも有名なのが「日本商工会議所」と「経済同友会」です。経団連と合わせて「経済3団体」とも呼ばれ、それぞれ連携もとっています。
日本商工会議所は、全国の中小企業や商店の代表が集まります。日本の会社の99.7%は中小企業です。日本商工会議所はその支援や、地域の経済を活性化するための活動などを行っています。
経済同友会は、会社の経営者が個人の立場で参加する団体です。会社のもうけだけでなく、社会全体のことを考えながら意見を出すのが特徴です。

解説者
崔真淑
エコノミスト 「グッドニュース アンド カンパニーズ」代表取締役
(朝日小学生新聞2025年1月31日付)

「朝小プラス」は朝日小学生新聞のデジタル版です。毎日の読む習慣が学力アップにつながります。1日1つの記事でも、1年間で相当な情報量に!ニュース解説は大人にもおすすめ。