今はデンマーク領、トランプ米大統領がほしがる
北極に近い世界最大の島グリーンランド。ヨーロッパのデンマークの領土ですが、アメリカ(米国)のトランプ大統領が米国のものにする考えを示して、注目されています。現地ではデンマークからの独立をめざす動きもあります。(松村大行)

2019年に続く提案/独立の動きも強まる
まずはグリーンランドを地図で確かめましょう。北米大陸にとなり合い、デンマークからは飛行機で5時間ほど。地図では一つの大陸といえるほど大きく見えますが、緯度が高いほど形がゆがむ図法のせいです。実際の面積はオーストラリアの3分の1ほどです。
新大統領に就任する前のトランプさんが「この島を手に入れる」と言い出しました。実は1期目の政権をになった2019年にも同じ提案をして、デンマーク政府が取り合わず、立ち消えました。
グリーンランドにくわしい北海学園大学准教授の高橋美野梨さんは、今回は少しようすがちがうといいます。独立をめざす動きが強まっているからです。
デンマークとグリーンランドのつながりは1千年ほど前までさかのぼります。北米大陸などからわたった先住民族が住む島に、デンマークからバイキングがやってきました。18世紀から続いた植民地支配が1953年に終わり、79年に自治権を獲得。独自の議会や政府があり、「首相」もいます。
島ではグリーンランド語が使われ、先住民族にルーツをもつ「エスキモー」の人々が多く暮らします。デンマーク本土からの関心も高いといえず、ずっと「見えない存在だった」といいます。そんな中で進むのが独立の動き。2023年には独自の憲法の案もつくりました。

豊富な資源、航路として注目
グリーンランドには二つの強みがあるといいます。一つは地下資源。ニッケルやチタンなどが大量に眠るとみられます。二つ目は、北米とアジアをつなぐ船の航路の役割です。地球温暖化で氷がとけて、通りやすくなりました。グリーンランドには米軍の基地があり、中国やロシアもこの地域で存在感を高めています。
デンマーク政府はトランプ大統領の提案をこばみつつ、「独立を決めるのはグリーンランド」としています。4月までにグリーンランド議会の選挙があり、結果が注目されます。
グリーンランド(デンマークの自治領)

面積 約217万平方キロメートル
人口 約5万6千人
中心都市 ヌーク
言語 グリーンランド語(公用語)、デンマーク語
歴史 1721年から1953年までデンマークの植民地。79年、自治権を得る。2009年の法律改正で、独立の条項が明記された
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