
いま、さまざまなものが値上がりしています。その影響を身近な献立から調べているのが「カレーライス物価」です。去年12月の1食分の値段は、初めて380円をこえました。9か月連続の値上がりですが、今後さらに上がるとも予想されています。(松村大行)
10年前から1食140円アップ
カレーライス物価は、経済に関するさまざまな情報を調べる「帝国データバンク」が去年7月から毎月調べ、発表しています。ジャガイモ、ニンジン、タマネギなど家庭でおなじみの材料が使われ、給食などでもよく出る「国民食」であることから選びました。
値段のもとになるのは、月ごとにものの値動きをまとめた総務省の小売物価統計調査。店で売られているカレールーのレシピから1食分の具材や量を定めて、カレー作りに必要な水やガスなどの費用も計算しました。
データは2015年までさかのぼって比べられます。15年2月の1食分は246円。これに対して、去年12月は386円でした。10年間で140円も上がっています。
発表を始めた去年の夏は肉や野菜などが高くなりましたが、秋になると一段落。かわって上がり始めたのがコメです。調査を担当する帝国データバンクの飯島大介さんは「コメの値段は長く変わっていなかったため、これは予想できなかった」といいます。
コメの値段は新米が出回り始めたら下がるとみられていましたが、大きく下がりませんでした。輸入される牛肉も高いまま。夏の猛暑や雨が少ないなどの影響で、野菜の値段も再び上がりました。
牛肉をとり肉に 家庭では節約の工夫
そうしてカレーライス物価は初めて380円台に到達。今後、400円にとどく可能性もありそうです。「おつかいでカレー6食分の材料を買うと、前は2千円あれば、おつりでおかしを買えました。今は2千円では足りません」
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カレールーのレシピで作ると値段は上がる一方ですが、飯島さんは「現実はそうではない」といいます。牛肉をとり肉に、ジャガイモやニンジンをキノコにするなど、それぞれの家庭で「節約」の工夫をしているからです。
カレーライス物価の計算で使う数字は、全国で平均した値です。産地からの距離や人口密度などに応じて、より高くなる地域もあるそうです。
カレーライスという身近な食べ物から、世の中のお金の問題をのぞくことができる、と飯島さん。「カレーライスの値段は1年で20%上がりました。一方、働いてもらえる給料は1年で5%上げるのが目標になっています。さて、これで足りるでしょうか?」
備蓄米の放出決まる
いまのコメの値上がりは、流通がうまくいっていないのが理由では、と指摘されています。2024年にとれたコメの量は、前の年より18万トン増える見こみです。それなのに、コメをあつかう業者が去年の年末までに確保できた量は、前の年より21万トン減っています。
そこで政府は今月、保管している「備蓄米」を市場に出すと決めました。コメが不作のときにしか出せないとしていた制度を1月末に改めました。
経済の専門家に聞きました
食べ物や日用品など私たちの生活にかかわるさまざまなものの値段(物価)が上がる「値上げラッシュ」が起きています。その背景を、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生さんに聞きました。(奥苑貴世)
原料・燃料に加え、輸送の費用も高く
帝国データバンクの調査では、パンや調味料、お菓子などの家庭用食品が今年1~2月、8千品目以上値上げされました。今年1年間で、1万5千~2万品目近くの食品が値上げされるかもしれないと予測しています。
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