作品の世界を体感できるしかけも

今回の展覧会は、2022年4月から今年1月までで全国14か所を回った「ヨシタケシンスケ展かもしれない」に、新しい展示を「たっぷり」加えたものです。

身の回りのことや自分の気持ちの変化を、いつも絵や言葉にしてメモしているというヨシタケさん。展覧会では、その細かなスケッチの複製7500点以上や、絵本の原画が見られます。さらに、作品の世界や考え方を体感できるしかけもあります。

例えば、絵本『あつかったら ぬげばいい』(白泉社)の「おとなでいるのにつかれたら あしのうらをじめんからはなせばいい」というシーン。この言葉の通り、実際にぶら下がって足をブラブラさせられる「つり輪の森」をつくりました。「いろんな世代の人が楽しめるように」と、複数のサイズを用意したといいます。

ヨシタケさんは「せっかく足を運んでもらうなら、ここでしか味わえない体験を持ち帰ってほしい」と話します。

「一つのテーマを追うよりは、そのときの自分の身近なものをえがくタイプ」だというヨシタケさん。絵本作家になってからの約12年で、本のテーマは少しずつ変化してきたといいます。

2人の子どものお父さんでもあり、「子どもが小さいときは、おしっこってもれるよね、とか服が引っかかって上手にぬげないよね、とかが身近なところにあった」。そうして『おしっこちょっぴりもれたろう』(PHP研究所)や『もう ぬげない』(ブロンズ新社)などの絵本が生まれました。

未来の自分に向けてもかきたい

「子どもが大きくなってくると、こうやって独り立ちしていくんだなあ、と『あんなに あんなに』(ポプラ社)をかきました」と話します。

©Shinsuke Yoshitake

自身が50代になったころから興味があるのは、年をとることや体の変化だといいます。「以前は子どものころの自分に向けて、大人になって分かったことを教えてあげるような感覚でかいていました。最近は、未来の自分に向けてもかきたいと思っています。『このときはこう考えていたんだよ』というのを残したい。そして、それを読んだ子どものみなさんが、どんなふうに感じるのかも気になりますね」

展覧会ではヨシタケさんの「これまで」から「今」をのぞき見ることができる、かもしれません。

ヨシタケさんと絵本『ころべばいいのに』(ブロンズ新社)に登場する「アイツ」のぬいぐるみ。展覧会限定で販売します=1月、東京都中央区 中尾浩之撮影

ヨシタケシンスケ

1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科修了。2013年に『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で絵本作家デビュー。これまで7度にわたり「MOE絵本屋さん大賞」第1位にかがやく。

ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ

会期 3月20日~6月3日

会場  CREATIVE MUSEUM TOKYO (TODA BUILDING6階)(東京都中央区)  

料金  一般2000円、小中学生1000円(当日券) ※一部日程は日時指定制。

くわしくは公式サイトで▶ https://yoshitake-ten.exhibit.jp/tokyo/(外部サイト) 

秋田県、愛媛県なども巡回予定(展示内容には変更があります)

3月16日から ヨシタケさんの連載スタート!

朝日小学生新聞では16日から、読者から募った質問やなやみに、ヨシタケさんが答える連載が始まります。絵本作家になったきっかけやストレス解消法、お母さんを「説得する方法」など、さまざまな質問と答えが飛び出します!

(朝日小学生新聞2025年3月6日付)