教科書やノート、宿題などの提出物――。学校に持って行くものって、たくさんありますよね。忘れ物をしないために、どんな工夫をすればいいでしょうか。忘れ物をなくす方法にくわしい臨床心理士の中島美鈴さんに聞きました。(浴野朝香)※2020年5月8日付の記事を再掲載
行動に集中 書いて確認、動きもむだなく
「新学期が始まったら絶対に忘れ物をしないぞ!」。そう心に決めている人もいるのではないでしょうか。でも、気合だけではなかなか難しそうです。
中島さんによると、必要なものを忘れずに学校などに持って行くためには、次の三つの行動を順序よくこなす必要があります。
①持って行くものを忘れずに覚えている、②持って行くものをすべてランドセルなどに入れる、③遅刻しない時刻までにランドセルを持って家を出る――。こうした一続きの行動ができると、忘れ物をしません。
かんたんなことのように思えますが、「子どもにとっては難しい」と中島さん。「目的に向かってやるべきことの順番を組み立てる脳の働きは、とても高度です。学習するうちに少しずつできるようになります」
子どもたちの脳は成長途中です。そのため、忘れ物も遅刻もせずに学校に出かけるというのは、子どもたちには結構レベルが高い行動だと言えます。
とは言え、教科書などを忘れると、学習に影響が出てしまいます。忘れないためにどういう工夫をしたらよいでしょうか。
中島さんは、持って行く物をホワイトボードに書き出すことをすすめます。低学年の場合は、保護者といっしょに書いたり、イラストで示したりすると、わかりやすいでしょう。

持って行く物をランドセルなどに入れる時には、テレビやゲームなど気の散りやすいものを近くに置かないことが大切です。ランドセルに入れることだけに集中し、一つずつ入れながらホワイトボードにチェックをつけます。チェックのマークの代わりに磁石をはり付けるのもよいでしょう。
最後に、いそがしい朝の時間を少しでもうまく使えるように、むだな動きなどがないか見直してみましょう。着ていく洋服やくつ下、ハンカチなどは、前日の夜にかごなどに入れて一まとめにしておくと、少ない動きで早く準備をすることができます。朝、準備をするときには、「5分で着替えをすませる」などと決めておいて、決めた時間をタイマーでセットしておくのもおすすめです。
これらの行動ができるようになったら、1か月は続けてみましょう。
中島さんによると、忘れ物をしてしまった時に、一番大切なのは、「次はどうしたら忘れずにすむかな」と考えることです。忘れ物をした経験から、忘れ物をしないための手立てを身につけることで、将来忘れ物をしないようになります。
中島美鈴さん
臨床心理士。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科などを経て、現在、九州大学大学院人間環境学府で認知行動療法の研究にたずさわる。
(朝日小学生新聞2020年5月8日付)

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