行動に集中 書いて確認、動きもむだなく

「新学期が始まったら絶対に忘れ物をしないぞ!」。そう心に決めている人もいるのではないでしょうか。でも、気合だけではなかなか難しそうです。

中島さんによると、必要なものを忘れずに学校などに持って行くためには、次の三つの行動を順序よくこなす必要があります。

①持って行くものを忘れずに覚えている、②持って行くものをすべてランドセルなどに入れる、③遅刻しない時刻までにランドセルを持って家を出る――。こうした一続きの行動ができると、忘れ物をしません。

かんたんなことのように思えますが、「子どもにとっては難しい」と中島さん。「目的に向かってやるべきことの順番を組み立てる脳の働きは、とても高度です。学習するうちに少しずつできるようになります」

子どもたちの脳は成長途中です。そのため、忘れ物も遅刻もせずに学校に出かけるというのは、子どもたちには結構レベルが高い行動だと言えます。

とは言え、教科書などを忘れると、学習に影響が出てしまいます。忘れないためにどういう工夫をしたらよいでしょうか。

中島さんは、持って行く物をホワイトボードに書き出すことをすすめます。低学年の場合は、保護者といっしょに書いたり、イラストで示したりすると、わかりやすいでしょう。

イラスト・たなかさゆり

持って行く物をランドセルなどに入れる時には、テレビやゲームなど気の散りやすいものを近くに置かないことが大切です。ランドセルに入れることだけに集中し、一つずつ入れながらホワイトボードにチェックをつけます。チェックのマークの代わりに磁石をはり付けるのもよいでしょう。

最後に、いそがしい朝の時間を少しでもうまく使えるように、むだな動きなどがないか見直してみましょう。着ていく洋服やくつ下、ハンカチなどは、前日の夜にかごなどに入れて一まとめにしておくと、少ない動きで早く準備をすることができます。朝、準備をするときには、「5分で着替えをすませる」などと決めておいて、決めた時間をタイマーでセットしておくのもおすすめです。

これらの行動ができるようになったら、1か月は続けてみましょう。

中島さんによると、忘れ物をしてしまった時に、一番大切なのは、「次はどうしたら忘れずにすむかな」と考えることです。忘れ物をした経験から、忘れ物をしないための手立てを身につけることで、将来忘れ物をしないようになります。

中島美鈴さん

臨床心理士。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科などを経て、現在、九州大学大学院人間環境学府で認知行動療法の研究にたずさわる。

(朝日小学生新聞2020年5月8日付)