トーストにはちみつをぬっていくクマや、かき氷をおいしそうに食べるシロクマ……。実はこれらの絵は、口にペンをくわえてえがいたものです。えがいたのは、手足に障がいがある六鹿香さん(26歳)。趣味だった絵が、いまや自身の生活を支えています。(佐藤美咲)

絵は独学/できることは自分で
「好きなクマや、季節に関連するものをえがくことが多いですね」。そう話す六鹿さんは取材中、ペンを口にくわえ、器用に色を重ねていくようすを見せてくれました。かげのつけ方などは、ユーチューブなどを見て独学で学んだといいます。
2100グラムという低体重で生まれた六鹿さん。手足が動かず、生後4か月のときに関節がかたくなったり動きにくくなったりする生まれつきの病気だという診断を受けました。
両親から「自分でできることは、できる限り自分で」といわれ、口を使って身の回りのことをこなしてきました。小学校は特別支援学級に通いつつ、ほとんどの授業を通常クラスで受けたといいます。
絵は幼いころからの趣味で、「えがいているときは自分のハンディを忘れることができた」と六鹿さん。中学生のころにアニメに夢中になると、好きなキャラクターをえがくように。高校生のときにスマートフォンを手にすると、無料のアプリで絵をかく日々を送りました。
高校2年生のときに「G7伊勢志摩サミット2016」のロゴマークコンテストで7千点以上の応募から最終候補14点に選ばれました。「うれしかったですし、デザインを考える楽しさを知りました」
両手が不自由な画家の協会に参加/1人暮らしを実現
六鹿さんが絵を本格的にえがいていきたいと思ったのは、2017年。介護施設でいっしょに働いていた人からさそわれた展示会で、自分と同じように口を使って絵をかく人がいると知ったのがきっかけです。その展示会は、両手が不自由な画家たちの自立を支援する「口と足で描く芸術家協会」(東京都新宿区)が開いたものでした。六鹿さんは「自分も絵で自立できるのでは」と希望をいだき、19年に協会に入りました。
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