

【理科編】☆From 灘
その星が今ある方向 示せる?
太陽系の惑星が並んで見える「惑星直列」という天体現象が2月末にありました。都市部でも日没後の空に金星、木星、火星がはっきり見えていましたよ。
さてここで問題です。木星が今ちょうど夜空の真上の方向に見えているとすると、木星は今どの方向にあるでしょうか。
真上に見えてるんだから真上の方向に決まってるって? はたしてそうかな。
木星と地球の距離は約9億キロです。光の速さは秒速30万キロです。計算すると木星から地球まで光が届くのに50分かかります。約1時間ですね。真上に見えている木星は1時間前の木星なのです。
地球は自転していて、24時間で360度回転します。1時間で地球は15度回転します。ということは、木星が今現在ある方向は、真上よりも角度で15度だけ西の方向であるということになります。
光の速さは非常に大きいですが無限大ではなくて、「物が今そこにあるように見える」からといって「今そこにある」とはいえないわけです。
地球上にある物を見る場合は、距離が近いので光が伝わる時間は非常に短く、位置や方向のずれは気になりません。しかし地球と惑星などのような大きな距離になると、光の伝わる時間が相当長くなり、ずれが生じます。
海王星は木星よりもっと遠くて、光が伝わるのに約4時間かかり、角度で60度ずれることになります。恒星になると一番近い恒星でも4光年離れていますから、見えているその恒星は4年前の恒星です。今現在どの方向にあるかを指さすのは、うーん、至難の業ですね。

灘中学・高校 理科教諭 浜口隆之
(朝日小学生新聞2025年3月21日付)

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