
【国語編】☆From 灘
発言する場面にも方言がある
私は高校を卒業するまで大阪、そして兵庫県の神戸で暮らし、東京の大学へ進学しました。大学生時代のある日、関東地方出身の友人に消しゴムを貸したことがありました。その消しゴムが返ってきた時に、私は「ありがとう」と言いました。すると友人は「えっ」と声をあげ、困惑そのものの表情で数秒間固まってしまいました。私はなぜ友人が困惑したのかわからず、困ってしまいました。

みなさんは、私に理解を示す人と、この友人に理解を示す人に二分されるのではないかと思います。近畿地方出身の人には前者が、その他の地域出身の人には後者が多いのではないでしょうか。実はこれは方言なのです。
方言というと独自の単語やアクセントといったイメージが強いでしょうが、全国共通の単語でも、どのような状況で発言するかには地域差があります。近畿地方では、自分が相手から何かをしてもらったら、ほとんどの場合「ありがとう」と言います。「借りた物を返す」も、その「何か」に入るというわけです。別に「貸した物をちゃんと返してくれるなんてありがとうございます」と言っているわけではありませんので、ご安心ください。
他にも、相手のまちがいを指摘する時の言い方や、そもそもの口数にさえ地域差があります。人々の性格によるものではなく、「ものの言い方」にも方言があるのだと知っておいてください。くわしく知りたい人には、少し難しい本ですが、岩波新書の『ものの言いかた西東』をおすすめします。
灘中学・高校(兵庫県神戸市)
国語科教諭 槇野祐大
(朝日小学生新聞2023年1月13日付)
※本サイトに掲載されるサービスを通じて書籍等を購入された場合、売上の一部が朝日学生新聞社に還元される事があります。

「朝小プラス」は朝日小学生新聞のデジタル版です。中学受験に役立つ記事「出るかも!時事問題」→「From灘」→「From渋谷幕張」→「From西大和→From開成」の順で掲載中です!