関税が「武器」 自国の経済に悪い影響も

Q 貿易戦争ってなに?

A 経済面で国に圧力かける争い

■解説者 崔真淑(エコノミスト・「グッドニュース アンド カンパニーズ」代表取締役)

そもそも「貿易」とは、国どうしで商品やサービスをやり取りすることです。たとえば外国から日本に果物を「輸入」し、日本から車を「輸出」したりします。

そのやり取りで「戦争」が起きることがあります。きっかけは経済について、国どうしの対立が深まること。武器を使う戦争とちがい、経済的な方法で相手の国に圧力をかけます。具体的には「関税」を引き上げたり、輸入を制限したりすることで、相手の国の品物を自国に入りにくくします。

関税とは、外国から輸入する品にかかる税金のことです。関税を高くすると、そのぶん輸入品の価格が上がり、結果として売れにくくなります。

自国の産業を守るために行われることが多く、高い関税をかけられた側の国も、同じように関税を引き上げることがあります。これがどんどん続くと、おたがいの国の経済に悪い影響がおよびます。

この「戦争」を防ぐには、国どうしが話し合いを重ね、公平で自由な貿易のルールを作ることが大切です。世界貿易機関(WTO)など国際的な組織もルールを作り、争いを解決する場も用意します。そうして世界の国々は、「貿易摩擦」とよばれるいざこざを減らす努力を続けてきました。

Q なぜ「戦争」が起きるの?

A 自国の産業が保護できるように「見える」から

■解説者 崔真淑(エコノミスト・「グッドニュース アンド カンパニーズ」代表取締役)

ここ数年、世界の経済を引っ張る米国と中国の間で貿易戦争が話題になってきました。今年、トランプさんが再び大統領になってからはカナダ、メキシコ、ヨーロッパ連合(EU)など、はば広い国・地域と争いが起きています。

貿易戦争は、世界の経済に大きく影響します。関税が上がると、その国の消費者がより高い値段で商品を買わなければならなくなります。会社も材料の費用が上がるため、商品の価格を上げざるを得なくなり、売り上げが減る可能性があります。長引くと、会社が海外での生産を見直したり、投資をひかえたりして、経済全体の成長がにぶくなるおそれがあります。

貿易戦争はだれにも得がなさそうです。なぜ起きるのでしょう? たとえば、関税は産業を守ってくれそうに「見える」のです。

米国の製造業がうまくいかないのは、中国から安い製品が入ってくるからだ。だから、中国からの輸入品に高い関税をかければ、米国で働く人の雇用が守られる――。

こう言われたら、納得してしまいそうになります。ただ産業の調子の良しあしは、そんなに単純には決まりません。逆に物価が上がったり、景気にブレーキがかかったりして、米国の経済に悪い影響が出ることも予想されます。

最近のニュース

米・トランプ大統領が輸入車に25%の関税

1980年代には、日本の自動車や電化製品が米国で人気となり、米国の産業に打撃となりました。こうした「貿易摩擦」に対して米国は日本に、輸出を自ら制限することなどを求めました。その結果、日本の経済にマイナスの影響をあたえたのです。

トランプ大統領は3月下旬、自国の雇用を守るといった理由で、米国に輸入される自動車に25%の関税をかけるよう命じ、今月3日に発動されました。さらに日本時間3日、世界各国・地域に「相互関税」を発動すると表明しました。日本からの輸入品へは24%の課税をします。

自動車の輸出の拠点となっているふ頭=3月、神奈川県横浜市 Ⓒ朝日新聞社

解説者
崔真淑
エコノミスト 「グッドニュース アンド カンパニーズ」代表取締役

(朝日小学生新聞2025年4月5日付)