3歳でピアノを習い始めた角野さんは、音楽と同じくらい算数が好きでした。中学受験をして開成中学・高校へ。毎年出ていたコンクールで活躍しながら、どうやって中学受験の勉強もしたのでしょうか。こども記者たちの質問は、子ども時代の話へとうつります。
自分で走れる土台、つくってくれたのはお母さん
たいせいさん 耳コピをするために、何をしましたか?
――子どものころから好きでずっとやっているから、「どうやって」っていわれると、難しい。
お母さんがピアノの先生で、基礎的な音楽理論を教えてくれたのね。長調と短調とか、基礎的な和声の話とか。そうしたら、聞いたものをひけるようになってきて。当時テレビで流れていたCMソングとかを耳コピしていたの。
でも耳コピをしていると、どうなっているのか分からないところが絶対あるんです。最初は試行錯誤でやるんだけど、それをくり返しているうちに、だんだん難しいものも分かってくるようになるんだよね。自分でコードネーム(和音記号)の勉強をしたのも役立った。
まとめると、最初に基礎的なことをお母さんから学んだおかげで、自分で走る土台を作ってもらって、あとはもう走って走って、自分で勉強して、たくさん耳コピして、だんだんできるようになったってかんじです。

耳コピするの?
たいせいさん たまに。「千本桜」の最初の方とか。
――千本桜、いいよね。ぼくもよくきいていた。
えまさん(小4) 子どものころは、どのくらい練習していて、いまはどのくらい練習していますか。
――ものすごく練習する人もたまにいるけれど、そういうタイプではなくて、子どものころは平均すると1日2~3時間ぐらいだったんじゃないかな。毎年、コンクールが近づくと5~6時間になってくるけれど、ふだんはそんなにやっていなかった。

いまは1日5~6時間。ふつうの会社員は7時間くらい働くわけだから、そのくらいはピアノをひきたい。飛行機での移動でひけない日もあるけれど、練習ってピアノがなくてもできることがある。飛行機の中でiPadを開いて、譜面を見ながら分析して頭の中でひくっていうこともあるかな。
算数と音楽、使う頭は似ているかも
えまさん かてぃんさんはどんな小学生でしたか?
――本当にしょうもない、やんちゃな小学生だったと思いますよ。教室の後ろの方で、いつも友だちとうるさくしていて。

でも、勉強することは好きだったね。特に算数。小学校に入る前からいろんな本を読みながら勉強していたし、もちろん音楽も好きだった。国語はきらい。
かずまさん 算数と音楽は、どんなところが似ていますか? ユーチューブで毎年お正月につくっている数字と音楽を組み合わせた動画は、すごいと思います。
――45×45で2025のやつですね。ありがとう。おもしろいよね。
音楽も長い作品になっていけばいくほど感情だけではなく、理論的に組み立てることが大事になってくるのね。そのときの考え方は、算数や数学の問題を解くときに使う頭と似ているかもしれない。
数学のことを知っていると、音楽に役立つことはたくさんあって、音って波なんだけど、波形なのね。多分いつか勉強すると思うけど。理科でも出てくる?
ゆいさん 塾でやりました。
――あ、そうだね。塾でやるよね。たとえば、和声がどうして気持ちよく聞こえるかを分析しようとすると、数学が出てくる。
周波数がそれぞれ異なっていて、どういうふうに混ざり合っていると美しく聞こえるかというのは、人は感覚的に理解することができる。でもその感覚が正しいのか、ときに不安になることもあるから、理論の力をかりると自信を持てる。自分の経験では、そういうことがあります。
中学受験との両立は? 一番大切なものを決めよう
ゆいさん いま6年生で中学受験をするんですけど、ピアノとの両立が難しいです。
――両立しなくていいよ。ぼくも小学5年の3月を最後に、ピアノを1回お休みして、1年間は受験に集中していた。
一番大切なものを自分の頭の中で決めておくといいと思う。そうすると、もうひとつは、むしろ気晴らしになるでしょ。ピアノは別にやらなくてもいいことだから、楽しんでひけばいい。

ゆいさん めざしている学校がありますが、偏差値が届いていません。角野さんは、勉強はどんなふうにやりましたか?
――問題を解くのが好きで、授業で学ぶよりも実践で生かしたいタイプだった。
たとえば、ある単元があったとして100%理解していなくても、とりあえず問題を解いてみて、何が分からなかったのかを自分で分析してそれを何回もくり返す。全部理解するというより、ざっくり理解して問題を解く。もう1周して、ざっくりな段階が一段階アップしていく。
掃除にたとえると、ここをきれいにして完璧になったから次の部屋に行くのではなくて、ざっと全体を掃除してから最初の部屋にもどってきれいにしていくかんじかな。そうすると全体が見えるから、どう計画すればいいかが分かってくる。
朝小リポーターとは

朝日小学生新聞の読者であれば、だれでも登録できるこども記者です。身近なできごとをまとめてリポートを投稿したり、インタビューやイベントの取材をしたりして、紙面作りに参加できます。登録方法は、毎週金曜に掲載される「朝小リポーター通信」で。