即興の演奏から新しい曲が生まれる

かずまさん 作曲をするときや曲をアレンジするとき、どうやっていますか? ユーチューブのファーストテイクの「きらきら星」は、ショパンの「木枯らし」みたいなところがあって、おどろきました。どうやったら、こんなアイデアがうかぶんですか?

――だいたいはピアノをひきながら思いつくんだけど、それは即興ができるっていう土台があるから。iPhoneで録音しながら、いろいろ遊んでひいてみると「これいいかも」と思いつく。

それは毎回じゃないし、思いつくときも、思いつかないときもある。即興でひく時間をたくさん取れば取るほど、自分でいいと思ったものがうかんでくる。それをピックアップして、組み合わせてアレンジして、編曲になったり、作曲になったりするっていうのが、ぼくのやっている方法ですかね。

「木枯らし」を入れるアイデアは、木枯らしをひいたことがあったから思いついたわけであって。やっぱりクラシックの曲をたくさんひいていると、そこで学んだことが即興や作曲に生きることもたくさんあります。

関口達朗撮影

ゆいさん グレン・グールドさん(1932~82年)というピアニストのことをテレビで見て、型破りなところが角野さんに似ていると思いました。角野さんは、いままでに影響を受けた人物はいますか? 

――おー、光栄です。グレン・グールドには、影響を受けています。ゆいさんも知っているように、彼も変わった人で、ある時期から生のコンサートをやめて録音しかしなくなった。録音でしかできないことをたくさんやったわけだけど、その発想力は、自分がユーチューブの動画をつくったり、何かを録音してCDにしたりするときのアイデアのもとになっていると思いますね。

ほかに影響を受けた人でいうと、いろいろいるんですけど、坂本龍一さん(1952~2023年)って知ってる?

かずまさん うん。「戦場のメリークリスマス」をひいたことがあるし、「aqua(アクア)」もきいたことがある。

――よく知っているね。彼の音楽の考え方とかもふくめて、たくさん影響を受けています。

子どものころに知った音楽の楽しさ、みんなにも

 角野さんは5月3~6日、東京・赤坂のサントリーホールなどで開かれる「こども音楽フェスティバル 2025」に、コンサート・プログラマーとして出演します。子どもたちに音楽に親しんでもらおうと、コンサートなどで使う「かてぃんピアノ」を各地のイベントに貸し出す活動にも力を入れています。アップライトピアノというコンパクトなタイプで、正面には透明なアクリル板がはってあるので、けんばんをおすとハンマーが弦をたたいて音が鳴るしくみがよくわかります。

かてぃんピアノを紹介する角野さん 関口達朗撮影

えまさん 東京のイベントで、かてぃんピアノをひいて、かてぃんさんのことを知りました。ユーチューブをいつも見ています。ひき終わった後に、立ち上がってどこかへ行っちゃうのが、すごくおもしろいから。

――やった! おもしろいって。かてぃんピアノで知ってくれたんだ。やる意味がありましたね。ありがとうございます。

たいせいさん こども音楽フェスティバルやかてぃんピアノなど、子どもたちに向けた活動をするのはどうしてですか?

――ぼくは音楽の楽しさを子どものころから知ることができたけれど、それは親のおかげでもあるし、こどもフェスみたいなコンサートがあったから。だから、いざ自分が大人になってみて――心は子どもですけど――同じような経験を子どもたちに届けたいって思いがある。純粋に子どもたちがみんなでいっしょに楽しんでいるのを見ると、ぼくもうれしくなります。

たいせいさん これからしたいことや目標を教えてください。

――目標はね、あんまりないんだよ。やりたいことはあるんだけどね。1~2年前から世界でだんだんコンサートができるようになったので、それを一つひとつがんばって、いいコンサートをして、もっともっと世界のいろんなところでコンサートできるようになったらいいなって思います。うん、たくさんコンサートをして、たくさん作曲します! それが目標です。

「絶対ピアノうまくなるよ」「受験がんばって」と、リポーターたちに言葉をかけながらハイタッチ 関口達朗撮影

角野隼斗(すみの・はやと)

関口達朗撮影

 1995年7月14日生まれ、千葉県出身。東京大学大学院情報理工学系研究科1年だった2018年、日本最大規模のコンクール、ピティナ・ピアノコンペティションで特級グランプリを受賞。21年にはショパン国際ピアノコンクールでセミファイナリストに。24年10月、世界デビューアルバム「Human Universe」を発売。いまはアメリカ・ニューヨークにくらす。

こども音楽フェスティバル 2025

関口達朗撮影

「こども音楽フェスティバル 2025」は5月3~6日、東京・赤坂のサントリーホールなどで開かれます。角野さんが出演する3公演などのオンライン配信チケットも販売中。会場では、かてぃんピアノをひくこともできます。くわしくは公式サイト(https://www.kofes.jp/)で。

てぃんピアノを貸し出す「アップライトピアノプロジェクト」は、5月1日から第2期の参加団体を募集。https://cateenup.piano.or.jp/

(朝日小学生新聞2025年4月29日付)