読者から寄せられた疑問を編集部が調査するコーナーです。今回は「どうして男性専用車両ない?」という質問に答えます。
3年生(兵庫県)Mさんの疑問
どうして電車には女性専用車両はあるのに、男性専用車両はないのですか?
強い要望を受けていません
男性専用車両の導入を求める強い要望を受けておらず、鉄道事業者がこれまで導入した例もないから。

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女性が安全に電車に乗れるように
駅のホームで、「女性専用車」という大きなステッカーがはられた車両を見たことがある人は多いと思います。
国土交通省によると、初めて本格的に女性専用車両を導入したのは京王電鉄。2001年に、東京都を走る京王線に登場しました。その後、ほかの鉄道事業者も導入を進め、23年度時点で、32の鉄道事業者の91路線に、女性専用車両が取り入れられています。しかし、男性専用車両が実施されている事例はないといいます。
鉄道事業者が、男性専用車両をあえてつくっていないのではなく、「女性専用車両が必要とされるようになった」のです。
そもそも「女性専用車両は、痴漢行為などの迷惑行為の防止に役立つものだと考えられています」と国土交通省。日本は、男女が対等な立場で、あらゆる分野で活動できる社会を意味する「男女共同参画社会」をめざしています。日本ではかつて、外で働くのは男性が中心でした。しかし、女性も社会に進出するようになる中、女性が安全に通勤・通学できる環境づくりが大事と考えられ、女性専用車両が必要とされたのです。
実際に東京都が24年に痴漢被害に関する大規模なアンケート調査を行ったところ、女性は半数以上にあたる56.3%、男性は15.2%が、これまでに電車内や駅構内で痴漢の被害にあった経験があることがわかりました。女性のほうが痴漢にあいやすい状況があるのです。
背景にある痴漢の被害
なお、女性専用車両を導入するかは、「鉄道事業者が利用者からの要望や、痴漢行為といった迷惑行為の発生状況などをふまえ、判断します」(国土交通省)。
その一例として、東京都交通局の都営地下鉄はどうでしょう。新宿線と大江戸線で、平日朝の時間帯に、各車両に一両ずつ、女性専用車両をもうけていますが、この時間帯は車内が混雑し、痴漢の通報件数が多いそうです。また「首都圏の鉄道事業者が、女性専用車両をどのように導入しているか、お客さまの利用のしやすさなどを総合的に判断し、時間帯や車両数を決めています」(東京都交通局)。

一方で、男性専用車両も、インターネット上で「つくってほしい」という声を見ることがあります。しかし、東京都交通局は「導入を求める強い要望を受けておらず、これまでほかの会社でも導入されていない」とし、今のところ、男性専用車両をつくる予定はないそうです。
女性専用車両の成り立ちの背景にある痴漢の被害。全国各地では痴漢撲滅キャンペーンも行われています。具体的にどのような取り組みをしているのか、調べてみてはどうでしょう。
(関田友衣)
もっと教えて
Q 女性専用車両は、小学生の男子も乗ることができないの?
A 鉄道事業者は、利用者に対し「女性のお客さまのほか、小学生以下のお客さま、お身体の不自由なお客さまとその介助者の方」についても乗車できると案内しています。
Q 対象の人以外が乗ると罰せられるの?
A いいえ。女性専用車両は、鉄道事業者が、利用者の理解と協力のもとで行っているものであり、男性が乗車することで、罰せられるものではありません。
(朝日小学生新聞2025年4月8日付)

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