東北の「絆」 世界へ発信

 東北地方には「青森ねぶた祭」や「盛岡さんさ踊り」など、学校の教科書に出てくる伝統的なお祭りがあります。こうしたお祭りが一堂に集まってパレードをする「東北絆まつり」が今年6月、大阪・関西万博にやってきます。(正木皓二郎)

震災犠牲者への祈り、復興の願いこめて

「東北絆まつり」で見られるのは青森ねぶた祭、秋田竿燈まつり、岩手県の盛岡さんさ踊り、山形花笠まつり、宮城県の仙台七夕まつり、福島わらじまつりの六つです。東北絆まつりは毎年6月に開かれ、東北6県の県庁所在地を1年ごとに順番にまわります。各地から選ばれたうでのあるおどり子たちの技を楽しめるのが特徴です。

お祭りが始まったきっかけは2011年3月11日、宮城県で最大震度7を記録した東日本大震災でした。地震と津波、東京電力福島第一原子力発電所(福島県)の事故の影響で、日本中でさまざまなイベントが中止となりました。 

そんな「自粛ムード」が広がるなか、ある広告会社からそれぞれの市に呼びかけがありました。犠牲者への祈りと復興の願いをこめて、東北一丸となってお祭りをやりましょう――。復興は長い道のりとなることが予想され、落ちこんだ経済を盛り上げるねらいもあったといいます。

お祭りはその年の7月、「東北六魂祭」という名前で、仙台市で開かれました。17年からは「東北絆まつり」に名前を変え、東北の魅力の発信にも力を入れてきました。そんなお祭りは今年、東北の地を飛び出し、世界に向けてひろうされます。

おどりで示す 東北の力強さ

福島の元気なすがた見せたい

東北絆まつりは6月14、15日の2日間、大阪・関西万博のEXPOアリーナで開かれます。今年のお祭りの事務局・仙台市文化観光局で3月まで働いていた土井葉子さんは「国内外からいただいた支援への感謝と、これからも東北が力強く前進していくというメッセージを発信したい」と話します。

「東北のお祭りをいっぺんに見られるのが一番の魅力」。そう話すのは、福島わらじまつり実行委員会の小口直孝さん(62歳)です。万博では、おどり子が合わせておどる「わらじ音頭」を歌います。

1回目の東北六魂祭の開催は、震災からおよそ4か月後でした。「ちゃんと元気でやっているところを見せないと」。小口さんは当時、そんな使命感を持って参加したといいます。

お祭りの期間中、会場には想定を上回る約36万人のお客さんが集まりました。小口さんたちが行進を始めると沿道からは「福島がんばれ!」とあたたかい声援が。「なみだを流しながらわらじをかついだ」とふり返ります。

約30年わらじまつりにかかわる小口さんは、東北絆まつりの良い影響を感じています。「ほかのお祭りと一緒におどる経験をつんで、地元のおどり子は堂々とおどれるようになったのでは。わらじまつりがより多くの人に知られるようにもなりました」 

パレードでは六つのお祭りがごちゃ混ぜになって練り歩く時間があり「他県の人にもわらじをかついでもらう」と小口さん。年に1度のお祭りが東北の絆を育む機会になっているそうです。

万博に向けて「海外の人たちにも福島の元気なすがたを見せたい」と意気ごみます。

青森ねぶた祭

2016年、青森市 ©朝日新聞社

針金と和紙でできた巨大な人形をかざった山車が有名。「跳人(はねと)」と呼ばれるおどり子たちが「ラッセラー、ラッセラー」のかけ声とともにおどり歩きます。衣装を着ればだれでも跳人として参加できます。

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