鳥羽水族館のラッコ=4月、三重県鳥羽市 ©朝日新聞社

ラッコの魅力にひたってる

 いまラッコブームが起こっています。ラッコは多い時には国内で122頭も飼育されていましたが、現在2頭まで減少。希少なラッコを見ようと、水族館に大ぜいの人が足を運んでいるのです。『ラッコ沼への招待状』という本を監修した動物学者の今泉忠明さんに、ラッコのふしぎな体のつくりや生態について話を聞きました。(関田友衣)

祖先は森を追われたイタチ

海でくらすラッコの祖先をさかのぼると、実は森にすむイタチです。ラッコの「胴が長く、あしが短いところは、イタチ科の動物の特徴」と今泉さんは話します。

「森にイタチが増えると、縄張り争いで、必ずすみに追いやられるものが出てくる。そういうイタチは、木の上にのぼったり、川に行ったりしました。川に行ったものの中にはその後、海におりていったものも。それがラッコの祖先になったのでしょう」

ほとんどのものが死んでしまう中、生きのびるものもいました。「貝を食べ物にしたのが大きいかもしれません。貝はにげないから、だれでもつかまえられます」

そのうち、海の環境になじむ体に進化したのが、今のラッコだといいます。

たとえば、毛の密度が高くなりました。冷たい海の中でも生きられるようにするためです。長い毛と短い毛の間に空気をためて保温します。また、あしは外側の指が長く、内側の指が短いひれのような形になっていて「この形だと、水面を移動しやすいのです」。

弱くて縄張り争いに負けたけれど、過酷な環境でもしぶとく生きぬく力があった。進化から、そんなラッコの一面がわかります。

単独行動と道具で食べ物を確保

『ラッコ沼への招待状』(世界文化社)から

ラッコは、おもしろい行動もします。たとえば野生のラッコは眠るとき、海で流されないよう、海藻を体にまきつけます。同じような理由で、ラッコ同士が手をつないで眠ることもありますが、「水族館にいるラッコにしか見られないと思います」と今泉さん。

「ラッコは単独行動をする動物です。理由は、イカやカニなどを食べる肉食だから。獲物の数が限られている中、みんなで分け合うとなくなるので、単独で獲物を探したほうがいいのです。ちなみに肉食動物のライオンは群れをなしますが、ライオンの獲物はシマウマなど大きいので、分け合うことができます」

また、道具を使うのも特徴です。石を使って海の底のアワビをとったり、胸に置いた石にからをたたきつけて割って食べたりします。

「すばやく食べ物を食べられるので効率がいいですよね。ラッコの祖先が海で生きのびることができたのは、道具を使えたからという理由もあるかもしれません」

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