
移住や旅行などで、外国人がたくさん日本に来ています。それにともない、病院にかかる外国人も増えています。中には、日本語が十分に話せず、症状などを医師にうまく伝えられない人もいます。そんな外国人と医師の間を取り持つのが「医療通訳者」という人たちです。ただ、その数は足りないといいます。(浴野朝香)
湘南鎌倉総合病院
英語、中国語、ベトナム語…
「本当に助かっています」
「病気やけがで病院にかかることになったら、だれでも心配でしょう。さらに言葉が通じない外国だったら、想像するだけで不安ですよね」。そう話すのは、神奈川県鎌倉市の湘南鎌倉総合病院で医療通訳を務める松尾剛弥さん。
この病院では、7人の医療通訳者が働いています。英語の担当が4人、中国語が2人、ベトナム語が1人。松尾さんは英語の通訳者です。言語や文化のちがいから受診をひかえる外国人を減らしたいと、2012年に国際医療支援室を立ち上げました。医療通訳者を派遣するNPO法人などとも協力しています。
松尾さんは6日、整形外科で、アメリカ人の男性患者(62歳)の通訳を受け持ちました。この男性は転んで右ひじを打ち、痛みをうったえて、何度か受診しています。
診察室では、医師と男性患者が向かい合い、松尾さんは患者のそばに座ります。医師が痛みの程度や薬の効き具合などをたずねると、松尾さんがすかさず英語にして、患者に説明します。それに患者が英語で答えると、聞き取った内容をすぐに日本語にして、医師に伝えます。
患者は「医療の言葉は専門的でわかりにくいのですが、ここではいつも医療通訳がついてくれるので、本当に助かっています」と話します。
追いつかないしくみ よくするには?
語学力、医療知識、精神的な負担
出入国在留管理庁によると、日本に住む外国人は2024年末に約377万人で、過去最高になりました。23年末から約36万人の増加で、増加率は1割をこえます。
外国人が増えるなか、医療通訳者はますます必要とされます。ところが、外国人の患者が安心して医療を受けられるしくみが整っている病院は、多くはありません。日本医療教育財団(本部・東京)が求める基準をクリアしている医療機関の数は、25年3月25日で69施設にとどまります。
なり手が少ないのも課題です。医療通訳者は語学の力に加え、病気やその治療法、薬などにかんする医療の知識を正しく理解することが求められます。国ごとの医療制度のちがいも頭に入れておかなければなりません。
東京都内の病院などで、日本語と中国語の医療通訳を務める中内新霞さんは「求められるレベルがとても高いのに、非常勤など不安定な雇用が多く、やめてしまう人もいます」と話します。
精神的な負担も大きいと中内さんはいいます。命にかかわるような病状でも、患者にかくさず、医師が説明した通りに伝える必要があります。患者の心に寄りそう心づかいも求められます。
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