
すてられるはずの卵の殻を再利用して作ったハンドタオルやくつ下が、大阪・関西万博内のセブン-イレブンで販売されています。使っているのは、殻の内側にあるうすい「膜」。ゆで卵を食べる時、つるんとむけるとうれしい、あの膜です。どうして膜が繊維に? 特徴は? 8年かけて開発した会社の担当者に聞きました。(戸井田紗耶香)
大阪万博の会場で体感できる
卵の殻の内側にあるうすい膜(卵殻膜)から生まれた繊維の名前は、オボヴェールといいます。卵を科学的に研究するファーマフーズ(京都市)が、すてられてしまう卵の殻を生かして2023年、新しい素材としてデビューさせました。
オボヴェールを使った生地は、万博でふれることができます。大阪ヘルスケアパビリオン内のファーマフーズのブースです。実際に上着をはおってみると、やわらかくてしっとり。さらっとした肌ざわりもあり新感覚でした。セーターなどの素材で人気のカシミヤに「やわらかな手ざわりが似ています」と、開発担当の古賀啓太さんは話します。

肌にうれしい機能もあります。「オボヴェールの生地を身につけると、肌のしっとり感がアップすることが実験でわかっています。肌の水分をとじこめ、肌本来の働きを助けてくれるからです」
それを可能にするのが、卵殻膜がもつすごい力です。

卵の不思議にみせられて…
ヒヨコを守る いのちの「おくるみ」

卵殻膜はたとえるなら「ヒヨコを育むためのいのちの『おくるみ』です」とファーマフーズの原田清佑さんは話します。主にたんぱく質からできていて、ばい菌など外の刺激からヒヨコを守り、必要な水分や酸素は通します。炎症をおさえる力もあります。

原田さんたちは元々「ニワトリが21日間温めると、ヒヨコになる」という卵の不思議にみせられ、卵がもつ働きを生かした機能性素材の開発に取り組んできました。そんな中、SDGsへの関心の高まりを受けて、すてられてしまう「殻」を再利用できないかと考え、生まれたのが新しい繊維のオボヴェールです。
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