アメリカがイランの核施設3か所を攻撃し、トランプ大統領がホワイトハウス(ワシントン)で、国民に向けた演説をしました=21日 代表撮影/ロイター/アフロ

イスラエルとイランの交戦に米が介入、核施設を空爆

米国のトランプ大統領が23日、お互いに攻撃し合っていたイスラエルとイランの間で、「完全かつ全面的な停戦が完全に合意された」とSNSに投稿しました。

イランをめぐる争いは13日にイスラエルがイランの核関連施設や首都テヘランの軍事施設などを攻撃したことで、緊張が高まりました。

イランもミサイルなどでイスラエルを攻撃。1500キロほどはなれた二つの国は、交戦状態に入りました。

米国は当初、同盟国のイスラエルに対し、攻撃をやめるよう呼びかけていました。米国はイランと、イランの核開発を制限する話し合いを進めていたためです。

トランプ大統領は16、17日にカナダで行われた主要7か国首脳会議(G7サミット)の2日目を「中東情勢に対応するため」として欠席。21日には、イランの核関連施設の空爆に踏み切りました。

これを受け、国際連合安全保障理事会は22日、緊急会合を開き、中国やロシアは米国を批判しました。

またイランは23日、中東のカタールにある米軍基地を攻撃。ただトランプ大統領は、イランから事前に攻撃を伝えられていたといいます。

ここ最近のうごき

13日  イスラエルがイランを攻撃
13日夜~14日  イランもイスラエルを攻撃
17日  トランプ米大統領、G7サミット2日目を欠席
21日  米国がイランを攻撃
23日  イランがカタールの米軍基地を攻撃
     「イスラエルとイランが停戦」とトランプ大統領が公表

長く続く対立 核問題から戦火

なぜイスラエルと米国はイランを攻撃したの?

アメリカ(米国)とイランは親しい関係だった時代もあります。太平洋戦争が終わった後、米国とソビエト連邦(今のロシアなど)が世界を二分して対立した東西冷戦の時代に、米国はソ連を中東に進出させないためにイランを支援し、よい関係だったのです。

関係が大きく変わったのは、1979年にイランでイスラム革命が起きたことでした。それまでの政治に国民の不満がたまり、抗議行動が広まりました。国王は国をはなれ、イスラム教シーア派の宗教指導者ホメイニ師が国のリーダーに。その後、イランは急速に反米の国になりました。

2002年にイランが核開発をないしょで進めていることがわかり、06年には国際連合(国連)安全保障理事会が制裁措置を決め、その後、各国による経済制裁が続きました。

13年に、話し合いを重視するロハニ政権が誕生。15年に、イランが核開発を制限するかわりに制裁をゆるめる「核合意」を米国、イギリス、フランス、ロシア、中国、ドイツの6か国と結びました。

しかし、18年に米国のトランプ政権がこの合意から一方的に離脱。イランは核開発につながるウラン濃縮=下の「なぜ核施設を標的に?」を見てね=などの活動を強化しました。

今年4月、トランプ大統領がリードしてイランと核問題に関する話し合いを始めましたが、思うように進んでいませんでした。

一方、イスラエルもイランが核開発を進めることを脅威に思っていました。そして6月13日にイスラエルがイランを攻撃。米国も21日に攻撃に踏み切りました。トランプさんは攻撃の目的について、「イランによる核の脅威を阻止することだった」と説明しました。

なぜ核施設を標的に?

核兵器開発を疑う

原子力発電所(原発)を動かすのにも使われるウラン。自然界にある天然ウランには、核分裂しやすいウランと、核分裂しにくいウランがあります。

原発で使うには核分裂しやすいウランの割合を3~5%まで高める必要があり、この工程を濃縮といいます。

濃縮度を20%以上に高めたものは「高濃縮ウラン」とされ、90%以上になると核兵器の原料になります。そのため、高濃縮ウランをつくることは特定の国にしか認められていません。

国際原子力機関(IAEA)はイランが60%の高濃縮ウランをためているとの報告書をまとめていました。60%の高濃縮ウランは、数週間で90%まで高められるとされ、「核兵器の開発をめざしているのではないか」と疑われていました。

■米国とイランをめぐる主なできごと

1979年
2月のイランのイスラム革命で、米国寄りの王朝からイスラム法学者をトップとする体制に変わる。11月にイランの米国大使館が占拠される事件が発生

80年
米国とイランが国交を断つ

2015年
イランと、米国、中国、ロシアなど6か国との間で「核合意」が成立

18年
トランプ政権が核合意から一方的に離脱。イランへの制裁を再開

20年
米軍がイランのイスラム革命防衛隊の司令官を殺害。イランがイラクの米軍拠点に報復攻撃

25年
4月 トランプ政権がイランと核協議を再開
6月 イスラエルがイランを攻撃、米国もイランの核関連施設などを爆撃

■近年のイスラエルとイランをめぐる主なできごと

2023年
10月 パレスチナ自治区ガザのハマス(イランが支援)がイスラエルを奇襲攻撃。イスラエルがガザでの大規模な戦闘開始

24年
4月 シリアのイラン大使館がイスラエルによるとみられる空爆を受ける。イランが報復としてイスラエル領内を初めて直接攻撃
7月 ハマス最高幹部がイランの首都テヘランで殺害される
9月 イスラエルがレバノンのヒズボラ(イランが支援)本部を攻撃。最高指導者を殺害
10月 イランが報復としてイスラエルを攻撃

25年
6月 イスラエルがイランの核関連施設などを攻撃し、軍事部門の幹部らを殺害。イランがすぐさま報復

授業や教科書では

強い権限持つ安全保障理事会

国連のなかで平和と安全にかんする取り組みを決める機関で、強い権限を持ちます。アメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国の常任理事国と、10か国の非常任理事国(任期2年)で構成されます。常任理事国には拒否権があり、1か国でも反対すると決定できないしくみになっています。

国連についてくわしく習うのは6年生です。ある教科書をみると、安保理について「国連のなかの重要な機関のひとつ。世界の平和と安全を守るため、国どうしの争いなどを解決する機関です」といった説明がされています。

(朝日小学生新聞2025年6月25日付)