彬子さまが大学院時代に着用していたガウンを特別にはおらせてもらいました=6月22日、赤坂御用地の三笠宮東邸(東京都千代田区) 関口達朗撮影

オックスフォードはハリポタの世界!?

取材は、写真撮影からスタート。博士号の学位授与式で着用した「赤と青のガウン」は、本のタイトルにもなりましたが、大学院の式典やフォーマル・ディナーのときは黒のガウンだったそうです。特別にガウンをはおらせてもらったかりんさん。ハリー・ポッターについて聞いた質問の答えで、みんなの緊張が一気にゆるみました。

かりんさん ご本の中でマートン・コレッジでのフォーマル・ディナーについて書いてありましたが、ハリー・ポッターみたいな雰囲気ですか? 私はハリー・ポッターが大好きなので、フォーマル・ディナーにあこがれています。

――そうそう、ハリー・ポッターみたいなかんじです。実際、私が通っていたマートン・コレッジのとなりで、映画の撮影が行われていました。でも、ローソクは飛んでいません。残念ながら(笑)。

博士号の学位授与式ではおった赤と青のガウン 宮内庁提供

取材メモから 一生の思い出に

 かりんさん 彬子さまから英語の勉強について前向きになれるアドバイスをいただいたので、これからはさらに積極的に取り組んでいくつもりです。彬子さまのガウンを着たことは、とても貴重な体験でした。一生の思い出として大切にしていきます。

「井の中の蛙、大海を知らず」

るいさん(5年) ぼくはイギリスの教育を受けていて、いずれ日本とイギリスのかけ橋になりたいと思っています。日本を外から見て気がついたことをお聞きしたいです。

――日本にいたときは、まわりが日本人ばかりで自分が日本人だと意識することは、ほとんどありませんでした。でも、海外に出てみると、さまざまな国の人がいて、考え方もまったくちがいます。そのなかで、自分の考えていたことはすごく日本的なんだと気づくことがありました。

「井の中の蛙(かわず)、大海(たいかい)を知らず」ということわざがありますが、外に出てみると、すごく広い世界が広がっているんだなと感じました。

日本にいると、日本の国の歴史とか、文化について知らなくても生きていけるので、取り立てて意識して勉強することはないけれど、イギリスでは、日本に関する質問だったら全部「アキコに聞いてみよう」って回ってくるんですね。政治経済から歴史、文学、何でも。そのときに、自分がいかに日本という国について知らなかったかを思い知らされました。

海外に出ると日本の代表としてあつかわれるので、日本のことをきちんと勉強したいと思うようになりました。

「赤と青のガウン」ベストセラーの理由は

オックスフォード大学での日々をつづった『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(PHP研究所)は、2015年に出版。「プリンセスの日常がおもしろすぎる」とSNSで話題になり、24年に文庫化されると38万部を超えるベストセラーに。25年4月には「彬子女王のオールナイトニッポンPremium」でラジオパーソナリティーをつとめて話題になりました。父の故・寛仁さまが出演して以来、皇室として半世紀ぶりの出演でした。

『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(彬子女王、PHP研究所)

るいさん エリザベス女王からお茶会のお招きがあったそうですが、彬子さまは日本の皇室と英国の王室の似ている点、ちがう点をお感じになりましたか?

――そうですね、英国王室の方が国民との距離が近いと感じました。バッキンガム宮殿ってまちなかにあって、フェンスに守られているだけで、なかが見えますよね。日本の皇居は森に囲まれているから、陛下がどんなお住まいにいらっしゃるか、日本の国民は見ることができません。

たとえば、イギリスでは女王陛下のマグカップとか、手をふっていらっしゃるお人形などを売っていますが、日本で陛下のマグカップを作るとなったら、宮内庁の人が「いやいやいや・・・」って絶対に止めると思います(笑)。

ちょうど女王陛下のご即位50周年(2002年)のときにイギリスにいたのですが、ストリートパーティーといって、まち全体でお祝いをしていました。国民が女王陛下のことをまるで自分のおばあちゃまのように大事に思っていらっしゃることを感じて、とても温かい気持ちになりました。

もちろん日本のみなさんも皇室を大事に思ってくださっていると思うのですが、その感覚がちょっとちがうのかな。英国がファミリー(家族)だとしたら、日本は「とても大切な方」と思ってくださっているような気がします。

だから、私の本を読んだり、ラジオを聞いたりしてくださった方は「全然ちがうところにいる人だと思っていたけれど、100円ショップに行くんだ」とか――

なみさん キーマカレー!

――そう(笑)。「キーマカレーをつくるんだ」とか、「こんなに苦労して勉強していたんだ」と親近感をもってくださったのかなと思います。

取材メモから 側衛さんのあだ名に「サブちゃん」

 なみさん 「側衛さん(皇室の方々の安全を守る人)の話がおもしろかったです」と伝えました。家族以上に長い時間を過ごすので「とても大切な存在」だといいます。あだ名をつけるそうで、ぱっと印象で決めるといいます。何でも聞いてくれるやさしい側衛さんのときは、『サザエさん』に出てくる酒屋の「サブちゃん」みたいだと思い、そう呼んだと教えてくださいました。