「側衛さん(皇族の安全を守る人たち)のお話がおもしろかったです」など、本やラジオの感想を伝えました=6月22日、赤坂御用地の三笠宮東邸(東京都千代田区) 関口達朗撮影

思ったことをそのまま書いてみる

るいさん 彬子さまのラジオを聞いたり、本を読んだりした子からは、人をひきつける話し方や文章の書き方の秘訣(ひけつ)を知りたいという質問がありました。

――ひきつけるような書き方ができているとは、自分では思っていないのですが・・・。最初に雑誌などに文章を書くようになったときに、自分は研究をしている人なので、研究者っぽいことを書かなきゃいけないと思っていたんですね。研究の過程で出てきた文章を引用してみたり、専門分野じゃなくても調べて、知っているように書いたりしなくてはならないと。

でも、編集担当の方に「彬子さまの文章は、意識しなくても研究者っぽいから、そう書かないでください」といわれて、すごく楽になったんです。知らないことは知らないといっていいんだ、思ったことを、思ったとおりに書けばいいんだって。そのころから、文章の書き方もちょっと変わったのかなという気はします。

るいさん 留学中に気づいた日本語のよさはありますか?

――日本語を勉強しているイギリス人の友だちに「日本語で一番難しいのは何だと思う?」と聞いたら、「日本語はひとつの言葉にたくさん意味がありすぎる」といわれました。

たとえば、英語だったら「着る」は wear ひとつ。でも日本語だと、帽子は「かぶる」、眼鏡は「かける」、ジャケットは「着る」「はおる」、ズボンは「はく」。それを日本人は、子どものころからふつうに使い分けているからすごいって。そう言われてから、日本語はすごく表現が多様だなと思うようになりました。

るいさん ものの数え方もいろいろあります。鉛筆は「本」、車は「台」とか。

――そうね。擬音語と擬態語もあります。「さらさら」とか「ざわざわ」とか。英語に正確に訳せない言葉がたくさんありますね。日本語は形容詞で語る言葉だけれど、英語は動詞で語る言葉だと思います。

かりんさん 英語で文章を書くのって難しいですよね。

――難しいですね。自分が日本語で書いた文章を英語に訳すのが一番きらいです。だったら、最初から英語で書いたほうがいい。

辞書を読んでいた小学生時代

なみさん 彬子さまは、どんな子どもでしたか? 小学生のときは、どんなことに興味がありましたか? 勉強や習いごとはしていましたか。

小学生のころは、すごくもじもじしていて、積極的に何かをできる子じゃなかったんです。小学生のころから私のことを知っている友人は、留学の前と後では別人のように変わったと思っているのではないでしょうか。

小学生のころの彬子さま。父の寬仁さまと 宮内庁提供

小学生のころは、本を読むのが好きだったので、辞書も読んでいました。

みんな 辞書!?

――国語辞典をぱっと開くと、知らない言葉がたくさんあるので、なんとなく読んでいました。ほかのお友だちでそういうことをしている人はいなかったから、変な子どもだったのでしょうね(笑)。

習いごとは、英語とプール。ピアノをちょっとだけやっていたのですが、うち(の職員)に音楽大学出身の人がいて、その人に教えてもらっていたからあまえてしまって。「明日にするー」「明日するー」といっているうちに、やらなくなってしまいました。だから、ピアノはやっておけばよかったと思うんです。

失敗もまた学び、挑戦をおそれないで

るいさん 2年生からの質問です。「私はこわがりで、飛行機に乗ることや外国に行くこともなんだかこわいです。将来やってみたいことはいろいろあるのに、勇気が出るか不安です。どうしたら彬子さまのように、いろいろなことにチャレンジできるようになれますか?」。最後に、こうした小学生に向けてのメッセージをお願いします。

――先ほどもいいましたが、私も小学生のころはもじもじしていて、すごく慎重で、いろいろなことに挑戦してみるような子ではありませんでした。留学をして、自分のことはすべて自分でやらなければいけなくなったので、何ごとにも挑戦するようになったのです。

やらないでする後悔よりも、やってする後悔のほうが、絶対的に意味があると気づきました。「失敗してもいいやん」って。失敗しても、それはまた学びだし、次に生かしていけばいい。そう思えるようになるには時間がかかるかもしれないけれど、何ごともやってみたらいいと思います。

取材メモから 大きな心で受け止めてくれた

 るいさん 一番心に残ったことは、ぼくたちの質問に対する彬子さまの答え方です。一人ひとりの質問にていねいに、そして相手の意見や気持ちを大きな心で受け止めてくださる姿に、とても感動しました。ぼくもできる範囲でまねしたいです。そして、いずれ彬子さまのようにイギリスと日本とのかけ橋になりたいと思います。

 あやねさん 彬子さまのお話は、私たち小学生が今すぐに取り組むことができるアドバイスばかりで、大変勉強になりました。自分にとっての「好き」を見つけること、そして、あえて「目標」を定めずにつき進んでみると、可能性が広がっておもしろいと話してくださったことがとても印象に残りました。

彬子女王殿下

関口達朗撮影

 1981年、故・寬仁親王殿下の長女として誕生。学習院大学在学中の1年間をふくめて計6年、イギリスのオックスフォード大学マートン・コレッジに留学。大学院では日本美術を専攻し、女性皇族として初めて博士号を取得。現在は、京都産業大学日本文化研究所特別教授、京都市立芸術大学客員教授、心游舎総裁などをつとめる。