
【国語編】☆From 灘
小学校でも中学校でも高校でも、国語の教科書には海外の文学作品が少なからずのせられています。これは過去100年程度といった比較的新しい作品だけではありません。古典、つまり古い時代の文学作品の授業でも、日本だけでなく漢文と呼ばれる中国の作品を多くあつかいます。その中には、卑弥呼が現れるよりも数百年以上前に書かれた歴史や哲学の本もあります。
国語の授業でそのような海外の、時には非常に古い作品を読む理由はいくつかあります。その一つは、日本の文学や文化が、海外からの影響を受けて形成されてきたからです。つまり、私たちを取り巻く美意識や物の見方を理解するためのヒントが、海外の文学作品にかくされているのです。
もちろん、日本が一方的に影響を受けているわけではありません。日本語で書かれた小説が翻訳されて世界中で読まれているだけでなく、俳句は海外でも広く作られています。漫画やゲームといった作品の人気については、言うまでもないことでしょう。グローバル化、情報化とともに、ますます世界中の文化がたがいに影響を与えあっていくと考えられます。
一方で、残り続ける違いもあります。中国の小説を元に江戸時代の日本で書かれたある小説では、登場人物の行動に、作品全体のテーマに関わる重要な変更が加えられています。この変更について、現代においても、中国の読者は元の形の方が良いと感じ、日本の読者は日本で作り替えられた形の方が良いと感じるのだそうです。こうしてさまざまな面を見ることで、現在の日本の文化の輪郭が次第につかめてくるのではないでしょうか。

灘中学・高校
国語科教諭 槇野祐大
(朝日小学生新聞2025年8月8日付)

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