「東京2025デフリンピック」の開幕100日前を記念したイベントに参加した朝小リポーターたち=8月7日、東京都内

デフスポーツの祭典が間近に

 耳がきこえない・きこえにくい選手たちによる国際的なスポーツ大会「デフリンピック」が、11月15日から東京都などで開かれます。開幕100日前を記念するイベント「東京2025デフリンピック 100 Days To Go!」が8月7日、東京都内でありました。朝小リポーターといっしょに取材しました。(奥苑貴世、關弘一朗)

開幕100日前を記念し 東京でイベント

取材したリポーターはあおとさん(6年)、ここなさん(5年)、いつきさん(4年)です。

デフリンピックが開かれることは、ニュースなどを通じて知っていた3人。この日は「耳がきこえない人たち(ろう者)の競技には、どんな工夫がある?」「応援はどうやってするの?」といった大会にまつわる疑問を調べるほか、きこえる・きこえないのかべをこえるコミュニケーションの方法も体験しました。

デフ陸上で使う「スタートランプ」を体験する朝小リポーター(右)=8月7日、東京都内

デフリンピックで行われる競技は「デフスポーツ」と呼ばれます。「デフ(deaf)」とは、英語で耳がきこえない・きこえにくいという意味です。基本的なルールはきこえる人たちの競技と同じですが、一部で工夫があります。

例えば、デフ陸上では「位置について・用意・ドン」を知らせる声やピストルの音が、選手にはきこえません。そこで、光で表す装置「スタートランプ」が使われています。

3人は、スタートランプを体験しました。ランプの色が黄色から緑色に変わると、スタートの合図です。陸上を習っているというあおとさんは「ふだんは耳に集中して、音を聞いてスタートしているので、目に集中するのが難しかった」と話しました。

イベントでは選手や有名人が登場するステージも。左からデフ卓球の亀澤理穂(かめざわ・りほ)選手、デフ陸上の山田真樹(やまだ・まき)選手、元陸上選手の朝原宣治(あさはら・のぶはる)さん、タレントのみやぞんさん、俳優の富栄(とみさかえ)ドラムさん ©東京都

きこえる・きこえないのかべをこえ

応援の気持ちとどける「サイン」

「行け!」などの応援する気持ちをこめた「サインエール」を練習しました=8月7日、東京都内

朝小リポーターたちは、専用の機械を使って「耳がきこえない生活」を仮想現実(VR)で体験しました。サッカーなどのスポーツの場面で、ここなさんは「かけ声や歓声がない」と、ちがいを感じました。

スポーツの試合で、観客の応援は、選手にとって勇気づけられるものです。歓声や拍手がきこえない・きこえにくい選手にも、応援の気持ちをとどけたい――。そんな思いから、デフリンピックに向けて「サインエール」がつくられました。

サインエールは、手の動きで応援する方法です。手話言語をベースにした動きを組み合わせ、「行け!」「大丈夫勝つ」などのメッセージがこめられています。

3人は、サインエールの開発にたずさわった人たちから、やり方を教わりました。難しいところもありましたが、何度か練習して、できるようになりました。いつきさんは「覚えたサインエールを使って、たくさんの選手にエールを送りたい」といいます。

手話言語にも挑戦

耳がきこえない人の生活やスポーツはどんなかんじ? VRを使って体験しました=8月7日、東京都内

3人は、ろう者から手話言語を教えてもらうワークショップにも参加。あいさつや自分の名前の手話言語を学び、自己紹介に挑戦しました。

デジタル技術で、会話のかべを減らす「ユニバーサル・コミュニケーション技術」も体験しました。開発中のアプリ「Sure Talk」もその一つで、人工知能(AI)を使っています。カメラに映した手話言語が、文字で表示されるようすを見せてもらいました。

タブレットに向かって手話をすると、画面に文字が表示されます。上の写真は「デフリンピック」の手話=8月7日、東京都内

取材を終えて

手話が伝わったうれしさ

手話の種類が数えきれないほどあり、覚えるのが難しかったですが、伝わったときはうれしかったです。VR体験で、ろう者はサッカーのパスのかけ声などがわからないことが理解でき、いつもやっているスポーツが難しく感じました。(あおとさん)

知りたいことがたくさん!

世界の手話を調べたり、手話を覚えてろう者の方たちと話したりしたいと思いました。生まれつき耳が不自由な人はどうやって言葉を習得したのだろうか、サッカーの試合中のコミュニケーションはどうしているのだろうかなど、いろいろと知りたいことがありました。(ここなさん)

「見える」応援に気づき

バスケットボールを習っているので、きこえない選手はどうやって試合をしているのか見に行きたいです。サインエールでは、見える応援があると知りました。バスケの試合を見に行くと、リズムに合わせた手拍子やかけ声、音や声の応援ばかりなんだと気がつきました。(いつきさん)

自由研究・探究学習のまとめ方

おすすめ学年:小3、小4、小5、小6

【STEP1】記事の内容を200字で要約しよう
【STEP2】次のことがらについて調べてみよう
・デフリンピックには、どんな競技があるかな? 調べてみよう
【STEP3】調べてわかったことや感想をまとめよう

デフリンピック

耳がきこえない・きこえにくい選手たちの国際的なスポーツ大会。1924年のフランス・パリ大会から始まりました。夏季と冬季の大会がそれぞれ4年に1回、開かれます。

「東京2025デフリンピック」は夏季大会として今年11月15日から26日まで、東京都・福島県・静岡県で開かれます。日本での開催は初めて。世界70以上の国・地域から約3千人の選手が集まり、21の競技が行われます。

(朝日小学生新聞2025年8月14日付)