夏休みとはいえ、バタバタに忙しい毎日だからこそ、たまには「どうして」に戻る時間も必要ですよね。

今の私は、まさにそんな時間を取っているところです。一年に1回、休暇と呼べるような時間です。本当はワシントンDCに居てこもりっきりで仕事した方が秋からの作業が楽になるんだけど、この「どうして」時間を取らないと大好きな仕事が「こなす作業」になってしまうから。

みんなにもそんな経験ありませんか?  大好きな家族との時間が「やりなさい」「早くしなさい」ばっかりで、イライラ爆発時間になってしまったり、人生100年時代のキャリアを考える代わりに「なんとなくこのまま」で流されたり。

でも、それって普通のことでもあるのです。だって何を置いてもまずは「目先のやるべきことをやる」のが日常だから。

だからあえて立ち止まる。それは歩みを止めることとは正反対に加速するためのステップだと考えています。

2つの自問

夫と出会ってから28年間、妊娠中とコロナ禍を除いて26年間ずっと通い続けている南仏の小さな町で、私はいつもこの2つを自分に問いかけています。

「どうして家族になったんだっけ?」
 「どうしてこの仕事を続けているんだっけ?」

夫婦や親子って、人間関係で一番近いからこそ甘えが出るし、「こうあるべき」も押し付けたくなります。だから喧嘩もするし、後悔することもある。

大好きな仕事であっても、作業量がキャパ超えになると、こなすことで精一杯で「この仕事ができて幸せ」どころじゃなくなる。

でも家族も、仕事も、そこにいて、そこにあって当たり前なんてない。

「一緒にいられることの幸せ」「自分のキャリアを作っていける幸せ」「誰かの生活や人生をより良くすることに関われる幸せ」。

そんなことを思い出す時間が、明日をより大きく、感謝に満ちたものにしてくれます。

「どうして」に立ち返るって大事ですよね。夏休みの終わりにこの2つ、自分に問いかけてみませんか?

南仏・ボーリューのプロメナードをお散歩中

ボーク重子

 ライフコーチ。Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。福島県出身。大学卒業後、外資系企業に勤務。退職後、イギリスの美術系大学院で美術史を学ぶ。結婚後アメリカに渡り、アートギャラリーをオープン。著書に『子育て後に「何もない私」にならない30のルール』(文藝春秋)など。

(朝小かぞくの新聞2025年8月20日号)