テレビの生放送の現場へ

 今年4月からNHKで新たに始まった子ども向けニュース番組『週刊情報チャージ!チルシル』。朝小と同じく、大人でも難しい出来事をわかりやすく伝える工夫がたくさんつまっています。朝小リポーターの2人が7月19日の生放送中のスタジオを取材。出演者や番組プロデューサーにもインタビューしました。(構成・松村大行)

身近なたとえでニュース解説/「わからん」札で質問も

スタジオに入ったのは、朝9時からの生放送の10分ほど前。本番直前でも出演する佐々木希さん、江原啓一郎アナウンサーたちから笑い声があがるなど、仲の良さが伝わります。

「放送開始まで●秒前!」のカウントが終わると放送が始まりました。まず、その週に起きた出来事を次々と紹介。大谷翔平選手の大リーグ・オールスター戦出場、全国各地でのクマの被害、新米の価格予想などが続きました。

そんな話題の中から一つをNHKの解説委員が説明し、難しいと思えば出演者が「わからん」の札をあげて質問します。この日のテーマは、39年前に起きた殺人事件について、前日に無罪の判決が出た「再審制度」。再審の開始を「開かずのとびら」にたとえ、その「かぎ」となる新しい証拠が大切だと解説しました。

セットの巨大なモニターに映るのは番組のキャラクター「ちるる」。スタジオ内にあるカメラの前で人が動くと、ちるるも同じように動くしくみです。けいさん(6年)は放送後に体験させてもらい、「声や感情に合わせて体を動かすのは大変そうだと思いました」。ちるるの声は生放送中、タレントの池田美優(みちょぱ)さんがスタジオ内の小部屋で吹きこみます=7月19日、東京都渋谷区 今井尚撮影

番組の最後は「特集」。この日のテーマは宇宙開発でした。番組のレギュラー「チルシルズ」のりりあなさん(小学3年)が日本科学未来館(東京都江東区)で開催中の「深宇宙展」を生中継でリポート。月面探査車の模型などを紹介しました。

ゆまさん(4年)は「生きている間にだれもが月に行ける宇宙旅行が身近になる未来に、期待がふくらみました」。

番組の最後にはカメラが向けられ、朝小リポーターの2人は出演も果たしました。

内容に合う声のトーンも意識

朝小リポーターの質問に答える佐々木希さん(左)、池田美優さん

放送終了後、出演者や番組プロデューサーにインタビューしました。

Q(質問) 『チルシル』の出演では、どんなことに気をつけていますか?

A(佐々木希さん) 放送がある土曜日の朝9時は起きて朝ごはんを食べるような時間帯なので、家族で見てくれたらうれしいなと思っています。ニュースには明るい内容も、戦争のように重たいものもあります。子どもも大人もしっかり学べて、わかりやすく伝えられるよう努力しています。

A(池田美優さん) 「ちるる」の声だけでニュースを伝えなければならないので、ことばの語尾はこっちのほうがいいかな、など考えます。ニュースの内容に合う声のトーンも意識します。本番前のリハーサルで台本を読み、スタッフの人と相談しながら自己流の言い回しに変えることもあります。

A(チルシルズのあいれさん) 自分と同じ子どもがわからないだろうと思ったら「わからん」の札をあげて、質問するように心がけています。疑問に思ったことは放送後に調べて、次回につなげています。

Q ニュースはふだん、どうやって見ていますか?

A(佐々木さん) お仕事の合間などにNHKの番組を見て世の中の流れを知り、よりくわしいことはインターネットで調べます。お仕事の現場で周りの人とニュースについて話し合うことも増えました。

A(池田さん) 家にいる間はテレビをつけて、ニュース番組をこまめに見ています。外では携帯電話で見ます。気になるニュースは自分で検索して、いろいろな人の意見をさまざまな角度から見るようにしています。

楽しくニュースにふれてほしい

収録の様子を見学したあと、出演者に質問をするゆまさん(4年)

Q 『チルシル』をつくったのはなぜですか?

A(遠衞孝成プロデューサー) 昔より子どもたちがSNSなどでニュースにふれる機会が増えています。中には本当かわからない「フェイクニュース」もあります。NHKはニュースが得意だからこそ、子どもにわかりやすく、楽しくニュースにふれてほしいと思ってつくりました。

Q 将来、アナウンサーになりたいです。アドバイスをください!

A(江原啓一郎アナウンサー) 自ら行動して、本当のことを知りたいと思う気持ちはアナウンサーをめざすのにすごく大切です。探究心や好奇心、(はやりや人気のあるものに関心を持つ)ミーハー魂をぜひ持ってください!

『チルシル』のニュースコーナーができるまで

「再審制度」について解説する場面のリハーサル風景 ©NHK

火曜日
どんなニュースを扱うか、話し合う

水曜日~
映像をつなぐ編集マン、台本を書くディレクターがニュースのVTRを作り始める。チルシルズと話し合い、子どもたちの興味や疑問を聞く。本番で新鮮に反応してほしいので、台本はわたさない!

木曜日
江原アナウンサーや解説委員と解説パートの打ち合わせ。解説に使うボードやフリップなども制作する

金曜日
ニュースのVTRが完成。解説パートをリハーサルして、「わからないこと」を探る

土曜日
事前リハーサルを経て本番

取材を終えて

江原さんに「将来ぜひNHKに来てください」と声をかけてもらえて、とてもうれしかったです。生放送の緊張感をはだで感じ、一つの番組にたくさんのスタッフさんがいてみんなで番組を作っていて、すてきなお仕事だと思いました。(ゆまさん)

毎回『チルシル』を見ています。楽しみながらわかりやすくニュースを知れます。取材を通して、子どもにわかりやすくニュースを伝えるため、出演者やスタッフの人の工夫や努力が多くあると知り、おどろきました。質問にもていねいに答えてくれてうれしかったです。(けいさん)

(朝日小学生新聞2025年8月22日付)