読者から寄せられた疑問を編集部が調査するコーナーです。今回は「キュウリが丸まったのはなぜ?」という質問に答えます。
2年生(埼玉県)Tさんの疑問
学校でキュウリを育てています。ぼくのだけ丸まりました。なぜですか?

東京農業大学農学部農学科 峯洋子さん
キュウリの成長には、葉の枚数や大きさが関係しています。Tさんのキュウリは、葉が少なかったり、小さかったりするかもしれません。原因として考えられるのは、日あたり、水不足、虫や病気の影響などです。
日あたり、水不足などが影響
炭水化物をうばいあうことも
キュウリの成長になぜ、葉が関係するのでしょうか?
葉は、太陽の光をあびて光合成をすることで、キュウリの成長に欠かせないエネルギー源である「炭水化物」をつくるからです。
炭水化物は、くきやつるがのびる時や、花が咲く時にも使われます。それらの成長を支えるために、十分な量の炭水化物を作りだせる大きな葉がたくさん必要になるのです。
葉の成長を助けるには、土に肥料をあたえるとよいです。チッ素やリン酸など、植物の成長に必要な養分が土の中にあると、葉やくきが十分に成長できるからです。そうすると、りっぱな花がたくさんつきます。花がふえると、キュウリもふえます。
ところが、つるに次々とキュウリの実がつきはじめると、こまった事態になることも。葉の量に対して、キュウリの数が多すぎる場合です。
そうなると、「キュウリの実どうしで、炭水化物のうばいあいが起きるのです」と峯さん。うばいあいは、キュウリの実と同じ場所についている巻きひげや新芽などにも起こります。さらに、葉に光が十分にあたらない時や、葉が虫や病気にさらされた時も同じことになるといいます。
曲がったキュウリを切ってみましょう。一番曲がったところの切断面は、きれいな円ではなく、三角形になっています。

植物の実は、葉が由来の「心皮」がひとつ、またはいくつか集まってできています。キュウリの場合は、三つの心皮が集まって1本のキュウリに成長します。三つの心皮は、同時に生みだされるわけではありません。時期にほんのわずかなちがいがあります。
「そのちがいが、炭水化物を引きよせる力のピークにずれを生むと考えられます」と峯さん。植物の体内で炭水化物のうばいあいが起きている時、その力関係はいわば「早い者勝ち」の状態です。
つまり、1番目にできた心皮ほど、炭水化物を引きよせる力が強く、先に大きくなります。最も成長がおそいのが3番目の心皮です。結果として、小さな3番目の心皮のほうに曲がった形のキュウリができるというわけです。
味や栄養に大きなちがいはない
まっすぐなキュウリと曲がったキュウリに、味や栄養のちがいはあるのでしょうか? 峯さんは、大きなちがいはないといいます。収穫後に運びやすいという理由で、市場ではまっすぐなキュウリが好まれる傾向があります。
「ふだん食べている野菜を、何でもよいので実際に育ててみる体験を、ぜひしてみて」と峯さん。「毎日の食事がより豊かで奥深いものになると思います」
キュウリからも「キュウリ水」⁉
昔から化粧水として使われてきた「ヘチマ水」を知っていますか? ヘチマは、キュウリと同じウリ科の植物で、くきを切ると、根からすいあげた水が切り口から出てきます。肌をととのえる成分が入っているとされます。「キュウリからも『キュウリ水』がとれますよ」と峯さん。キュウリを育ておわったら、葉はすべてとり、くきを土から20センチくらいのところで切ります。必ず朝に切ってください。「化粧水に使うのはおすすめできませんが、実験してみるとおもしろいですよ」
(戸井田紗耶香)
(朝日小学生新聞2025年8月19日付)

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