
バイオリニストの神尾真由子さんは9月23日、大阪市のフェスティバルホールで、交響楽団とコンサートを開きます。演奏するのは、子どものときにあこがれた二つの大曲です。バイオリンを習う朝小リポーターのめいさん(東京都・5年)が、神尾さんにインタビュー。バイオリンのこと、今までの「大ピンチ」など、気になることを聞きました。(中塚慧)
おじいさんの思い受け、4歳から
今回のコンサートでは、ドイツの作曲家メンデルスゾーンと、ロシアの作曲家チャイコフスキーのバイオリン協奏曲を演奏します。協奏曲とは、「主役」となる楽器を担当する一人の奏者と、オーケストラがともに演奏するものです。
「メンデルスゾーンの協奏曲は、私が小学校中学年くらいのときに一番ひきたかった曲です」と神尾さん。冒頭の美しいメロディーがよく知られていますが、「バイオリンのソロがそのメロディーをひくのは、最初の部分だけ。そこをぜひ聞いてほしい」といいます。
チャイコフスキーは、神尾さんがとくに好きな作曲家です。この協奏曲は「人の心をがっしりつかむ名曲」。神尾さんがバイオリンを始めてから、ずっと目標にしていた曲でもあります。
めいさんは、神尾さんにバイオリンを始めた理由を聞きました。神尾さんが3歳のときに最初に習ったのはピアノでした。ところがピアノは「あまり上手にならず」、4歳のころにおじいさんのすすめでバイオリンを始めました。
おじいさんはもともとバイオリンをひいていましたが、太平洋戦争の時期に「習いごとどころではない社会になり、やめたそうです」。戦後、ジャズバンドを組んで音楽を続けました。そんなおじいさんの思いを受けて手に取ったバイオリンに、「初めてひいたその日から、バイオリニストになろうと決めた」くらい、すぐにひかれました。
「バイオリンは楽器自体も高価だし、上達するほどレッスン代も高くなる」。親から「やめないか」といわれると、決まり文句のように返していたのが「チャイコフスキーのバイオリン協奏曲をひけるようになるまで続けたい」でした。21歳のとき、その曲もひいてチャイコフスキー国際コンクールで優勝。世界から注目を集めました。

コンクールの大ピンチ切りぬける
めいさんは、「これまで大ピンチはありましたか」と気になっていたことを質問。神尾さんは18、19歳のときに、コンクールで曲数が多すぎて曲を覚えきれなかった話をしました。リズムだけあわせてうろ覚えでひいたそうです。よく知られていない現代曲で、「開き直ったのがよかったのか、審査員からも不審がられずに切りぬけられました」。
実は、神尾さんは朝小読者のお母さんでもあります。もともと新聞を読む習慣があった神尾さん。いま5年生の息子が2、3年生のときに、「おそろいでとろうか」と提案し、朝小も購読するようになりました。息子は、まんが「武者ムシャ戦国野菜」(4コマは毎週金曜)がお気に入り。料理のコーナーを読み、2人で実際に作ったこともあります。
「最初はながめるだけだった息子も、高学年になってニュースの内容がわかるようになったようです。うれしい変化ですね」と、母の顔をのぞかせました。
めいさんの感想
コンクールの大ピンチの話にびっくりしました。私だったら、あきらめて途中で終わらせて帰ると思います。自作のアレンジで乗り切ったなんて、さすがプロです。いつか神尾さんのコンサートに行って、きれいな音を生で聞きたいと思いました。
神尾真由子(かみお・まゆこ)
1986年生まれ、大阪府出身。2007年に第13回チャイコフスキー国際コンクールで優勝。東京音楽大学教授。CD「チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲&プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番」などを発表している。
9月23日に大阪で演奏会
第63回大阪国際フェスティバル2025
「神尾真由子 × 日本センチュリー交響楽団 華麗なる2大コンチェルト」
日時 9月23日(火・祝)午後2時開演
場所 フェスティバルホール(大阪市)
指揮は大友直人さん
(朝日小学生新聞2025年9月4日付)