
読者から寄せられた疑問を編集部が調査するコーナーです。今回は小学4年生(長野県)から寄せられた「磁石はどうやって作るの?」という質問に答えます。
小学4年生(長野県)の疑問
磁石はどうやって作っているのですか? 鉄を北極と南極に持っていき、磁気を集めているのですか?
マグファイン 渡部貴彬さんの回答
予想は半分当たりで、鉄が主な原料になります。そこにネオジムなどの「レアアース」と呼ばれる金属を混ぜ、合金にします。この合金には磁力がありません。強力な着磁コイルの磁力によっていつでも使える「永久磁石」になります。磁石で磁石を作るんです。
合金と強力な着磁コイルを使って作る
鉄だけでは磁石にならない
今回は磁石を製造販売する会社「マグファイン」の渡部貴彬さんに聞きました。鉄を磁石でこすると一時的に磁石になりますが、すぐに磁力を失います。店では磁力を失わない「永久磁石」が売られています。その中でも磁力が強い「ネオジム磁石」の作り方を教えてもらいました。
井上さんの予想で合っていたのは材料。磁石の主な成分は「鉄」です。実は鉄はとても小さな磁石が集まったような素材なのです。でも普通の鉄はN極とS極の向きがばらばらになっていて、全体で見ると磁石にはなっていません。
強力な永久磁石を作るには、鉄にネオジムやジスプロシウムといった希少な金属(レアアース)を混ぜます。
磁石作りは大きく、「溶かす」「くだく」「固める」「焼く」「着磁」に分かれます。

①溶かす 鉄とレアアースを1千度以上の高温で熱し、冷やして硬い合金にします。
②くだく できた合金をくだいて細かい粉にします。溶かして固めただけでは、まだ磁石にはなっていません。
③固める 合金の粉を金属の型に入れ、磁石のN極とS極の間に型を置きながら、おし固めます。こうすることでN極とS極の向きをそろえて固めることができ、強い磁石になるための準備が整います。ただし「砂で作ったおにぎり」のようにもろく、くずれます。
④焼く 固めたものを焼きます。焼くことで粉がふくらみ、つぶどうしの間がうまって固くなります。焼いて固めるのは茶わんなどの陶器を焼いて作るのとよく似ているそうです。
焼き終わると真っ黒になりますが、原料のネオジムはとてもさびやすく、1時間もたつとだんだん赤くなります。そのため、表面にさび防止のメッキをぬります。これで見た目はよく見る磁石と変わらなくなりますが、まだ強い磁力はありません。
⑤着磁 磁力は、電気の力を使う「着磁コイル」で着けます。銅線をぐるぐると巻いてできたコイルの中に入れ、コイルに一瞬の間、「家庭だとブレーカーが落ちて停電してしまうほど」強力な電気を流します。金属のかたまりだったものが突然、「永久磁石」になります。
「持続可能」が今後の課題
磁石の性能は、材料の成分や作り方のよしあしで決まるため、着磁の後ではなく、前に検査を済ます場合もあるそうです。
こうしてできた磁石はモーター、スピーカー、スマートフォンなどさまざまな製品に使われます。渡部さんによると、最近では電気自動車や風力発電でたくさん求められるようになったといいます。

磁石を作るときには電気をたくさん使います。地球温暖化の対策が進む中、どうやって磁石作りを「持続可能」にしていくかが課題です。
また原料のレアアースはどれも天然の資源で、ほとんどは中国にあるため、磁石を作る工場も中国に集中してあります。磁石作りは国どうしの仲の良さにも左右されます。そのため、レアアースを使わず作れる強力な磁石の研究開発も進みます。
(朝日小学生新聞2023年6月6日付)

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