
家庭で性教育と聞くと「むずかしそう」「自信がない」と感じたり、異性の子どもへの伝え方に苦慮したりしている保護者が少なくないようです。でも「家庭でしか伝えられない性教育」があるとしたら。多くの人たちにいのちや性の授業を続けている助産師の直井亜紀さんに聞きました。(文・石川実恵子、監修・命育)
Q 子どもに性の知識をきちんと伝えられるか、自信がありません。
逃げない、ごまかさない、はぐらかさない
性の話だからといって構える必要はありません。友だち関係、勉強、将来の夢といった話題と同じで、大人が全部きれいに答えられるわけがありませんから。
大事なのは「逃げない」「ごまかさない」「はぐらかさない」こと。子どもに聞かれて答えられないときは「わからないから調べるね」と言って後日伝えたり、「一緒に調べよう」と誘ったりするのもよいですね。今は小学生向けや思春期の子向けの良質な性教育の本やインターネットのサイトもあります。
知りたいことがあったとき、困ったときに子どもが親に相談してくるのは小学生までです。即答できなくても、逃げずにきちんと伝えたいという姿勢を親が見せれば、子どもは「ちゃんと自分と向き合ってくれる」と安心するはずです。
家庭での性教育はエピソードを伝えること
思春期までに親子の信頼関係がしっかりできていれば、同性はもちろん、異性の親も日常の話題として性の話はできます。ところが、例えば、あまり関わってこなかったお父さんが急に娘に「生理はきたのか」なんて話しかけたら、嫌がられてしまいますよね。
これまでの関わり方に自信がなければ、本から入るのがよいでしょう。「読んでみたら」と渡すときも「会社の先輩にすすめられたから」など、ひとごとにするとスムーズです。
私は、学校の性教育は知識を教えることで、家庭での性教育はエピソードを伝えることだと考えています。「性教育=性行為の話」ではないのです。そこは子どもに尋ねられても、生々しい話をする必要はありません。
家庭では「妊娠は今までで一番うれしかった」「生まれたとき祖父母が歓喜した」など実際のエピソードをポジティブな言葉で伝え続けることで、「自分自身は大切な存在だ」と思える雰囲気をつくりたいですよね。自分と同じように他人も大切に思えるようになれば、人権教育につながります。
またスキンシップは、性的同意を教えるチャンスです。子どもにふれる前に確認し、いやがったらやめる態度を親が示せば、「いやだと言ってもやめない人は悪い人」と気づき、性犯罪予防につなげられるのです。
子どもといっしょにお風呂に入っているなら、お風呂で男女の体の違いについて話すのもよいですね。このように、家庭は性教育の機会の宝庫なのです。
【性教育Q&A】子どもが生理を「いやなこと」と思っているようです
朝小プラス子育て

直井亜紀(なおい・あき)
一般社団法人べビケア推進協会代表理事、助産師、思春期保健相談士、日本思春期学会性教育認定講師。「聞いた子どもが幸せな気持ちになる言葉」をモットーに、小・中・高校や企業など約5万人以上にいのちや性の話を伝える。母子保健奨励賞、内閣府特命担当大臣表彰などを受賞。
プラス1 わからないとき、自信がないときに「いい本」
直井さんは「大人がわからないとき、伝える自信がないときには本がおすすめです。また、子どもが性のことに興味を持ち始めたら、『いい本、あるよ』ってリビングに置くんです」と話します。「いっしょに読んでも、子どもが勝手に読んでもよいです。インターネットは、子どもがフィルターをかいくぐって見る前に、大人が安全なサイトに誘導しましょう」とも。
直井さん推薦 本選びの参考にしたいサイト
「親子で読む&子供に読んで欲しい性教育本・絵本」(命育)https://meiiku.com/bookreview/
直井亜紀さんの本
『わが子に伝えたいお母さんのための性教育入門』マンガ:ゆむい(実務教育出版)
『マンガでわかる 思春期のわが子と話したい性のこと』マンガ:すぎやまえみこ(新星出版社)

生教育プロジェクトは、「性を学ぶことは、生きるを学ぶこと。」をテーマに掲げ、子どもたちに性や命についてきちんと教えることを目的としています。
感想や取り上げてほしいテーマなどのリクエストはこちらから
https://www.asagaku.com/sex-ed.html
(朝小かぞくの新聞2023年12月20日号)

「朝小プラス」は朝日小学生新聞のデジタル版です。時事問題に出そうなニュースから勉強アドバイスまで、中学受験に役立つタイムリーな記事が盛りだくさん!