大谷義夫先生の「知っ得カルテ」

春本番です。過ごしやすい季節になりました。

「冬こそ外へ!」と題して、歩くことの大切さを書いた1月20日号のコラムをご記憶の方も多いと思います。今月は、エビデンスに基づいた歩かないデメリットをご紹介します。

日本人は世界で一番座っている時間が長い!? 太陽を味方に、冬こそ外へ

朝小プラスライフ

日本人は座るの大好き!?

シドニー大学の研究では、日本は世界20か国のうち、「座りっぱなしの国ワースト1位」と報告されています。日本人の成人は、1日のうち平均7時間、多い方は10時間も座っており、他の国と比較すると、嬉しくない1位なのです。

「最近太ってきた」、「健康診断で運動を勧められた」、「血圧や血糖値、コレステロールが高い」、「心も身体もなんとなく不調」などの悩みを抱えている方は少なくありません。しかも、その殆どの方は運動した方がいいとわかっています。でも出来ない……。それが現実ではないでしょうか?

座り続けるリスク

ここ数年、新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが増え、通勤が減り、座る時間が増えた方も多いと思います。テレビだけでなく、スマホ、ゲーム、動画配信サービスなど、座ったまま楽しめることがいくらでもあります。この便利さが、座ったままの状態を促進してしまいます。私のクリニックに来られるご高齢の患者さんには、丸一日テレビの前にいるという方もおられます。

座り続けることには、想像以上にデメリットがあります。京都府立医科大学が6万人を対象に行った調査では、「座っている時間が長ければ長いほど死亡リスクが高い」ことが報告されました。持病がない方でも、日中座っている時間が2時間増えるごとに死亡リスクは15パーセント増加するという恐ろしいデータがあります。

生活習慣病があるとさらに死亡リスクは増加し、糖尿病は27パーセント、高血圧は20パーセント、脂質異常症では18パーセントもリスクが高まります。生活習慣病の持病があり、薬をのみつつ、メタボになってきた方は、本当に気をつけて頂きたいのです。

座らないために歩く!

「座る」の反対語は「立つ」です。最近では、立ったまま会議をする会社もあるそうです。運動はたいへんでも、「立って歩く」ことは可能ですね。

私たちは生後1年未満で歩き始めようとします。子供のころは走り回りますが、大人になって走るのはたいへんです。それでも可能な範囲で歩くことはできます。座る時間を短くするために歩く、という発想はどうでしょうか。死亡リスクを減らすために、健康寿命を延ばすためにも、歩き始めませんか。

大谷義夫(おおたに・よしお)

1963年生まれ。89年に群馬大学医学部卒業。東京医科歯科大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授を経て、現在、池袋大谷クリニック院長。 呼吸器内科のスペシャリストとして新型コロナウイルス対策などでも情報発信をおこない、患者に寄り添う具体的なカウンセリングに定評がある。

(朝小かぞくの新聞2024年3月20日号)