人工衛星などに影響 社会が大きく混乱するおそれ

Q 太陽フレアはどんな現象?

A 太陽の表面で起きる爆発

解説者 瀧澤美奈子(科学ジャーナリスト)

太陽の表面には、黒いしみのように見える黒点があります。太陽の表面温度が約6千度なのに対し、黒点は約4千度と低いため、暗く見えるのです。太陽面の爆発であるフレアは、この黒点と深く関係しています。

太陽の活動は約11年の周期でくり返され、黒点の数も増減をくり返しています。フレアもこれに連動し、太陽活動が大きい時期ほどたくさん発生します。

フレアが発生すると、黒点の周りにとても明るい部分が現れます。数分のうちに最も明るくなり、その後ゆっくり暗くなっていきます。短いと数分、長いと数時間続きます。

大きなフレアでは太陽の表面から、太陽風と呼ばれるプラズマ(電子やイオンなど電気を帯びた粒子)が大量に飛び出します。太陽風は数日の間に地球にとどき、最終的には大気と反応して、通常は北極と南極の空に美しいオーロラがまいおどります。

Q 「磁気嵐」とは? 何が起こる?

A 地球の磁気が乱れる現象。電波障害のおそれも

解説者 瀧澤美奈子(科学ジャーナリスト)

地磁気が乱れる現象を磁気嵐といいます。地磁気とは、地球の磁気のことです。地球の内部では、熱く溶けた鉄などが流れることで磁気が生じています。おおむね、地球をつらぬく棒磁石を北極の方向にS極、南極の方向にN極を向けて置いたような構造をしています。

紙に置いた棒磁石の周りに砂鉄をまく実験をすると、棒磁石の磁力線を見ることができます。地球の周りの磁力線も、同じように地球をとりまいています。ただし、太陽フレアが起きていないときでも太陽風は吹いているため、地球の周りの磁力線は太陽と反対側にたなびいた少しゆがんだ形です。

ところが、特に大きな太陽フレアが発生すると大量のプラズマが一気に飛んで来て、地磁気が大きく乱されます。これが磁気嵐です。100年に1度かそれ以下の頻度で発生する、特に大きな「エクストリーム・イベント」が起きると、ますます大変です。

記録によると1859年、アメリカ南部のフロリダ州でオーロラが見えるほどの激しい磁気嵐が起きました。電力システムが止まり、電報用紙が発火しました。

現代は生活のあらゆるところに人工衛星や電力システムが利用されています。もしも最悪の巨大磁気嵐が起きると、大変なことになりそうです。電波障害で緊急電話が使えなくなったり、人工衛星が故障して通信障害が起きたりするかもしれません。全地球測位システム(GPS)の精度が落ちると、航空システムやロボット、ドローンなどが影響を受けます。地上でも大規模な停電が発生するなど、社会が大きな混乱におちいるかもしれません。

最近のNEWS

太陽活動さらに活発に 日本でもオーロラ観測

去年、北海道で赤いオーロラが観測されて話題になりました。現在の太陽活動は2025年のピークに向かっているため、最近はさらに活発になっています。

特に5月8日から15日にかけては大きな太陽フレアが13回発生しました。愛知県などでもオーロラが見えました。15日の太陽フレアは19年に今の太陽周期が始まって以来、最も大きな規模でした。

情報通信研究機構が日々の太陽活動や磁気嵐を観測し、「宇宙天気予報」として発表しています。万が一のために私たちができることは、停電への備えや非常食の準備など、日ごろの災害対策が役立ちそうです。

日本でもオーロラ見えた!【新聞で自由研究】

朝小プラスまなび

(朝日小学生新聞2024年6月21日付)