
「二十億光年の孤独」「生きる」…
「どきん」「生きる」「二十億光年の孤独」など、親しみやすいことばと大胆な感性によって生み出された詩の作品で知られ、世代をこえて多くの人たちに愛されてきた戦後を代表する詩人、谷川俊太郎さん。13日、老衰のため亡くなりました。92歳でした。
やさしくて大胆…夢中になったね
谷川さんは1931年、哲学者の谷川徹三さんの長男として東京で生まれました。
16歳から詩をつくり始め、52年に詩集『二十億光年の孤独』でデビュー。壮大な宇宙で孤独を抱えながら生きる、人間の内面をとらえた新鮮な表現が注目されました。
日本語の可能性を広げるような詩で高く評価されてきました。また、ひらがなややさしい言葉ながら、するどい表現でハッとさせる作品も数多く、子どもたちを夢中にさせました。
スヌーピーも訳したよ
国語の教科書にも、世界中で人々がそれぞれに迎える朝を表現した「朝のリレー」や、さまざまな人生の瞬間や景色をとらえた「生きる」など数々の詩があり、子どもたちに詩の世界への扉を開きました。
教科書にも登場するレオ・レオニの絵本『スイミー』、スヌーピーが登場するシュルツのまんが「ピーナッツ」の翻訳も手がけました。そのほか脚本や作詞などでも知られ、詩人の枠にとどまらない活動で多くの作品を残しました。
「詩の楽しみ方はどこまでも自由でいいんだよ」
谷川さんを2013、15、22年に取材した記者が、心に残る言葉をふり返ります。
質問に、やさしく、時に厳しい表情も見せながら答える姿が印象に残ります。
「詩は理解することよりも、味わうことのほうが大事」という話がありました。なんとなく好き、なんとなく気に入らない。それでいいんだといいます。だから、「理想の詩は草花のようなもの。見た人が『きれいだな』と思ってうれしくなったり、なぐさめられたりするものがいい」と語っていました。
詩の楽しみ方はどこまでも自由だといいます。「生きているということ いま生きているということ それは○○」と続く「生きる」という谷川さんの詩があります。その一節に「それはピカソ」とあるのに対し、記者が「自分なら(別の画家の)シャガールがいいな」と言うと「いいね!」と目を細めてくれました。
SNSなどで言葉があふれていますが、子どもたちには「実体験を大切にして」と願っていました。「知識だけだと、情報とかわらない。親や友だちとの関係、感動した本や音楽、旅行も実体験になる。それらを通して、知識を知恵にしていって」と話していました。(中塚慧)
谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)

1931年、東京生まれ。詩集『二十億光年の孤独』でデビュー。以来、多くの詩集、児童書の翻訳作品を発表。作詞家として、全国の小学校などの校歌も数多く手がけた。
(朝日小学生新聞2024年11月20日付)

「朝小プラス」は朝日小学生新聞のデジタル版です。毎日の読む習慣が学力アップにつながります。1日1つの記事でも、1年間で相当な情報量に!ニュース解説は大人にもおすすめ。