「トイレにくわしい芸人」佐藤満春さん 小学校などで講演

 お笑いコンビ・どきどきキャンプの佐藤満春さんは、トイレを愛する「トイレ博士」として知られています。好きすぎるあまり、トイレの性能やそうじのしかたを長年研究。その魅力をライブや本などで伝えています。「トイレを後ろ向きにとらえないで」。小学生へのメッセージです。(正木皓二郎)

「ほっとひと息つける場所」。佐藤さんにとってトイレはそんな存在です。1人になりたいときや自分と向き合いたいとき、だれにもじゃまされないトイレの個室は、小学生のころから特別な場所でした。

トイレ好きを意識したのは大学を卒業し、お笑いコンビを組んだあとのことです。トイレを開発した人たちを取りあげた番組をみて、「こんなにもいろいろな技術がつめこまれているんだ」と感動しました。それからトイレについて勉強し、ライブで知識や雑学を披露するようになりました。

当時はテレビに出ることが一番良いとされていた時代。変わり種として見られることもあったそうですが、コンビでお笑い番組に出演しながら、次第に「トイレにくわしい芸人」としても広まりました。今はテレビやラジオ番組の企画を考える放送作家の仕事をするほか、自身もバラエティー番組に出たり、トイレにかんするライブを開いたりしています。

佐藤さんは小学生に伝えたいことがあるといいます。それは「トイレに行くことははずかしくない」ということ。NPO法人日本トイレ研究所が2022年に行った調査によると、小学生がトイレをがまんする理由で最も多かったのが「友だちに知られたくない」でした。

「トイレはすごく大事なもので、私たちの生活に欠かせません。食事を楽しむのと同じように明るく楽しく、きれいに使う習慣をつけて」と佐藤さん。小学校で授業をしたり、歌をつくったりして、魅力を伝え続けています。

小学生にトイレのおもしろさを伝える佐藤満春さん=7月、東京都杉並区

佐藤満春さんを知るための質問

Q1 どんな小学生でしたか?
 暗かったと思います。友だちもいないし、得意なこともなくて、将来の夢を聞かれるのが結構きつかったですね。まじめで勉強ができない子という感じでした。

Q2 お笑い芸人になろうと思ったのはなぜ?
 中学生のときにラジオにはまり、それからテレビのお笑い番組もみるようになりました。どちらも好きで、お笑い芸人をめざしながら、ラジオにかかわる仕事も目標にしました。でもこれは消去法です。ほかにやることがなかったのと、お笑い芸人は下積みの期間が30歳くらいまでは許されるという思いがあったからです。

Q3 放送作家のおもしろさは?
 自分だけではできないことが、かたちになることです。周りには能力のある人がたくさんいます。番組をつくる人たちから相談を受けて、思いついたおもしろいアイデアが実現し、結果がでたときにおもしろさを感じます。

Q4 トイレが仕事につながったきっかけは?
 最初は趣味で東京都内のきれいなトイレをまとめて地図にしたり、いろいろなメーカーの商品を調べたりしていました。それらを、仲の良いお笑いコンビ・オードリーの若林(正恭)くんがおもしろがってくれたのです。若林くんが個性と認めてくれたことで、自分の良さに気づけました。自分のことをまっすぐな目線で伝えてくれる友だちがいたというのはすごく幸福だし、ありがたいことでした。

Q5 トイレの魅力は何ですか?
 便器のかたちや水が流れる角度など、トイレは職人のこだわりがつまった努力の結晶です。だれもが1日何度も使うものなのに、あまりにも知らなすぎるというのが魅力の一つ。知れば知るほど奥深いなと思います。

日本と世界のトイレ事情、のぞいてみると…「きれい」「安全」への挑戦続く

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Q6 トイレをきれいに使うにはどうすればいい?
 おうちのものでさえ、みんなで使う共有物です。次に使う人がどう思うか、出て行くときにちゃんとチェックすることが大切。駅や公園、学校のトイレも、おうちのトイレと同じように使うという意識は大事だと思います。

Q7 小学生に伝えたいことは?
 好きなことを仕事にしなきゃいけないとか、何か強みを見つけなきゃいけないという空気があると思います。何も見つからなくても大丈夫、と伝えたいですね。苦しくなる必要はありません。見つかったとしても仕事にする必要もない。それを楽しみに生きていけばいいのです。

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佐藤満春(さとう・みつはる)

 1978年2月17日生まれ、東京都出身。愛称はサトミツ。2001年、お笑いコンビ「どきどきキャンプ」を結成。ラジオやテレビ番組の内容を考える放送作家としても活動中。名誉トイレ診断士など、トイレにかんする資格をもつ。

(朝日小学生新聞2024年11月21日付)