
大谷義夫先生の「知っ得カルテ」
長い夏、短い秋、そしてあっという間に寒い冬の到来です。先月は、ワクチン接種、手洗い、アルコール手指消毒、マスクや換気などの基本的な予防を復習していただきました。今月は、これから出来る更なる予防をご紹介します。
インフルエンザは一年中
インフルエンザウイルスは、低湿度では活性が増し、高湿度では活性が低下すると考えられてきましたが、最近、湿度が低くても高くてもインフルエンザウイルスの活性は変わらないという論文が報告されました。沖縄では夏でもインフルエンザの流行が認められています。実際に熱帯・亜熱帯地域では1年中流行し、特に雨季に大流行します。
加湿器の効果
インフルエンザウイルスの活性に湿度は無関係でも、低湿度では私達の気道の免疫である線毛運動が不活化し、ウイルスなどの異物除去能力が低下します。そんな冬の必須アイテムが加湿器です。
加湿器で室内の湿度50~60パーセントを維持してください。湿度が80~90パーセントと高すぎると、室内のカビが繁殖しやすくなります。加湿器のタンク内の水は毎日交換すること、定期清掃も重要です。
水の交換を怠ると、カビや細菌が繁殖し、部屋中にばらまかれ、それを吸入することで、カビや細菌による過敏性肺炎、加湿器肺というアレルギー性肺炎を発症してしまうリスクがあります。これらを発症すると、発熱や咳、呼吸困難で苦しみ、入院して検査・治療が必要になりますから、加湿器のタンク内の水の毎日の交換、および清掃は習慣づけてください。
口腔ケアの重要性
口腔ケアも重要です。歯科衛生士による積極的な口腔ケアで、インフルエンザの発症を10分の1に減少できたという報告もあります。口腔内細菌に含まれるタンパクがインフルエンザウイルスの気道への侵入および増殖を助けてしまうため、口腔内を清潔にすることが重要です。口腔内の細菌が減少すれば、風邪ウイルスも気道に侵入しにくくなるので、風邪予防につながります。
高齢者の誤嚥性肺炎は、飲食物の誤嚥で発症するのではなく、口腔内細菌を含んだ唾液を夜間寝ている間に誤嚥して、細菌が気管支・肺に侵入することで生じます。私は毎食後の歯磨きだけでなく、就寝前の歯磨きを長めに行い、フロスも併用しています。
コロナが感染症の5類になって1年以上が経過しましたが、様々なウイルスが流行して気が抜けません。感染症のセルフケアをよろしくお願いします。
大谷義夫(おおたに・よしお)
1963年生まれ。89年に群馬大学医学部卒業。東京医科歯科大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授を経て、現在、池袋大谷クリニック院長。 呼吸器内科のスペシャリストとして新型コロナウイルス対策などでも情報発信をおこない、患者に寄り添う具体的なカウンセリングに定評がある。
(朝小かぞくの新聞2024年12月20日号)

「朝小プラス」は朝日小学生新聞のデジタル版です。バラエティー豊かな記事が、お子さまの興味の幅を広げます。初めてお申し込みの方は、最初の1か月無料 ・解約OK!お気軽にお申し込みください。