
隊員たちが低利用魚・クロダイの調理に挑戦
あまり食べられたり、利用されたりしていない「低利用魚」を食べることで、「日本の食や自然の豊かさに気がついてほしい」というさかなクンも参加し、低利用魚の料理に「さかなクン探究隊」(主催・青い地球を育む会)のメンバーが挑戦しました。お店であまり見ない魚ですが、どんな料理になったでしょうか。(小貫友里)
4千種のうち店に並ぶのは20~30種
日本の海には4千種ほどの魚が知られています。しかしお店に並ぶのはそのうちわずか20~30種ほどです。
今回さかなクン探究隊が取り組んだのは、あまり食べられていない「低利用魚」の調理です。12月、東京・丸の内のABC HEALTH LABOで、国内外で料理教室を行うABCクッキングスタジオの先生に教えてもらいました。
今回は岡山県でとれたクロダイを使いました。体が赤色のマダイはお祝いの席などでよく食べられます。でもクロダイは色が黒いことなどが理由であまり食べられていません。まずはさかなクンが、クロダイについて解説してくれました。
利用できない魚はほとんどいない

クロダイのあら煮、おさしみ、ムニエルを作りました。包丁で魚を切るのは初めてという人もいましたが、無事に全員分が完成。隊員は「すごくおいしい!」などと言いながら、平らげていました。


この日は全国漁業協同組合連合会の馬田英史さんの講義があり、「漁師さんたちがとった魚はいろいろな調理法で食べられていて、食用にならないものは家畜や養殖魚のえさになる。利用できない魚はほとんどいない」と教えてくれました。日本の海の資源を守る水産庁の吉川千景さんの講義もありました。魚はとりきらず、きちんと量を管理すればずっと食べられること、いろいろな種の魚を食べることが水産業を支えることになることを教えてくれました。
水島紗良さん(5年)は、「とてもおいしかった。ほかの低利用魚ももっと知って食べてみたい。魚をたくさん食べて水産業を守りたい」と話しました。
地域にねざした魚 日本の豊かさ知るきっかけに

さかなクンのお話 「低利用魚」という言葉が使われるようになったのは、ごく最近です。私たちには本来、近くの海や川、湖などにくらすお魚をおいしくいただく文化がありました。だんだん、だれもが知るおなじみのお魚ばかり食べるようになってしまいました。しかしクロダイちゃんもその骨が、縄文時代の貝塚でもたくさん見つかっています。低利用魚といわれるお魚たちも、元々は身近なお魚だったのです。
地元や国産ものをもっと意識して食べると、日本の食べ物や自然の豊かさに気づけます。遠くから取り寄せるための、エネルギーや費用なども減らせます。
今も海や川、湖の近くのお魚屋さんには目の前でとれたお魚たちが並んでいます。ぜひ冬休みや新年には、旅先や田舎で、地元のお魚屋さんに行ってみてください。お店の方にお話を聞くと、お魚がとれた場所やおいしい食べ方など、きっとたくさんのことを学べると思いますよ!!
温暖化の影響でノリ養殖の「悪者」に

さかなクンのお話 クロダイちゃんはれっきとしたタイの仲間(タイ科)で、最大60センチほどになります。名前の通り黒々したタイちゃんで、浅い海でこの色は敵に見つかりにくいカムフラージュになります。好ききらいがなく、エビ、カニなど甲殻類やお魚、海藻も食べる、お魚にはめずらしい雑食性です。
でも最近は大切な養殖ノリをたくさん食べてしまうと問題です。近年海水の温度が上がっています。クロダイちゃんは寒い時期はクマさんの冬眠のようにおとなしくしていたのですが、暖かくなった今では冬も休めず何かを食べなければいけません。そして養殖ノリを食べるようになってしまったのです。深刻な漁業被害だとクロダイちゃんは悪者あつかいされています。でも原因は海水温が上がってしまったこと……。ならばみなさまで、感謝しておいしくいただきましょう!
(朝日小学生新聞2025年1月4日付)

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