「英語にたくさん触れられる場所」の変化

これまでバイリンガル教育についてお話ししてきたが、今回は少し切り口を変えて、ChatGPTによる英語学習について。

「英語でコミュニケーションが取れる」というスキルは、日本社会で大きな強みとなる。しかし、日本という「英語を全く話す必要がほとんどない環境」でそのスキルを身につけるのは一苦労だ。そのため日本で英語を話せるようになるためには「英語にたくさん触れられる場所」が必要となってくる。

一昔前であれば、その「場所」の代表格が「英会話学校」であった。しかし、時代が進むにつれて「オンライン英会話」が登場。比較的手頃な価格と自宅など好きな場所からレッスンを受けられる便利さにより、スクールがどんどん減っていった。

そして現在、英会話学校が更に追い込まれる状況となっている。その理由がAIだ。具体的にはChatGPT。こいつはすごい!  ChatGPTは24時間、365日、スマホとインターネットさえあればいつでもどこでも英会話の練習相手になってくれる。しかも、話題の守備範囲がかなり広い! 政治や歴史といった硬いトピックから、アニメや漫画といった日本のサブカルチャーまで、どんな話題にも対応可能なので、大人だけでなく子どもも使うことができる。そして驚くことにこれが全て無料!

使い方は簡単。ChatGPT のアプリをダウンロードし起動。あとは以下の赤い部分をタップするだけである。そうすると以下のような画面になるので

ChatGPT を起動するとこのような画面が出てくる(2025年1月現在)
真ん中に「黒い丸」か「空のような丸」が出ている時に話しかける(2025年1月現在)

英語で I want to practice speaking English.(英語を話す練習をしたいんだ) とスマホに話しかければ、Sure! What would you like to talk about today?(いいよ!今日は何について話したいの?)といった返事がくるのでトピックを適当に選び英会話練習スタートとなる。

もしトピックが思いつかないようなら I don’t know. Would you give me a topic? (わからないな。何かトピックをくれる?)と言えば様々なトピックを提供してくれる。

ChatGPTが変える英語学習

では、このデジタル語学チューターが具体的にどのように使えるのか説明していこう。

1. 究極の英語壁打ちパートナー

テニスの壁打ちを想像してもらいたい。壁にボールを打つと即座に返し、文句も言わず、1時間でも、2時間で自分が疲れるまで練習に付き合ってくれる。ChatGPTは英会話の「壁」そのもの。何を聞いても即座に答えが返ってくるし、自分が満足するまで練習相手になってくれる。また、同じ質問を10回、20回しても嫌な態度を微塵も出さない。更にすごいのは、「オススメの映画は?」といった簡単な質問から、「行動経済学ってどんな学問なの?」といった学術的な質問、更に「好きな子がいるんだけど、声をかけられなくて・・・どうしたら良いと思う?」といった恋愛アドバイザーにするような質問までどんな質問にも答えてくれるのだ。

2. ロールプレイ

ChatGPTを使うと、コーヒーの注文、ホテルの予約、ビジネスの交渉といった様々なシチュエーションでの英会話練習を行うことができる。それだけではない!「インド訛りの英語を話すバリスタになって」や「めちゃくちゃ不機嫌な受付係になって」などロールプレイに味付けをすることも可能! ChatGPTは、色々な知識を持っているだけでなく、名役者でもあるのだ。なんとも頼もしい!

3. 無限のトピックジェネレーター

英会話練習を行う上で苦労するのは、話題を考えること。色々なことに関心を持ち日頃から勉強している方であれば、話題が尽きることもないだろうが、そうでない限り練習を重ねるごとに話せる話題がなくなってきてしまう。しかし、ChatGPTがいれば、そんな心配をする必要はない。「今日の予定」といった日常会話から「犬派? 猫派?」といった意見を述べる練習、また「オススメの◯◯」といった何かを紹介する練習まで様々な話題を提案してくれる。更に多様な話題から「へ〜、犬派・猫派っていうのは、dog person・cat person って言うんだ〜」といった様々な表現を自然に学ことができるおまけ付きだ。

4. 文法の達人

正直に言おう。基本的に英語ネイティブは文法の説明が苦手だ。しかし、それはある意味当然。我々も「『私は』と『私が』の違いについて教えて」なんて尋ねられたら「え〜っと・・・」と考えてしまうのと同じように、基本的に母国語は理屈ではなく感覚で覚えているため説明するのが難しいのだ。しかし、ChatGPTは違う! 英語の文章を入力してIs this sentence correct and natural?(この文は、正しくて自然?)と尋ねると、間違っている場合は、丁寧に修正し、その理由を説明、また正しい使い方の例まで出してくれる。

友だちに話しかける感覚で

このように スマホと ChatGPT さえあれば、お子さんでも英会話を上達させたい保護者でも誰でも英会話の練習ができてしまう。しかも全て無料で。そのため、まずは騙されたと思って実際に試してもらいたい。スマホを手に取りChatGPTのアプリをダウンロード。アプリを起動させ「友だちに話しかける感覚」で スマホに話しかけてみよう。何を話したら良いのかわからない場合は、I want to practice speaking English. Would you give me a topic?(英語を話す練習をしたいんだ。トピックをくれますか?)といってみよう。あまりにリアルな英会話に感動すら覚えるかもしれない。(ただし、お子さんの場合、そもそも言語能力が発展途上のためChatGPT が会話を理解できないという場合もあるとか。そのため、親御さんと一緒に練習するのがオススメ)

藤井拓哉(ふじい・たくや)

 1984年生まれ。父親の都合で3歳~6歳までと、15歳~24歳までをアメリカのオハイオ州で過ごす。オハイオ州立大学、同大学院で教育学を学び、日本語の教員免許とTESOL(英語を母国語としない方のための英語教授法)を取得。帰国後は、宇都宮大学で英語講師を務める。数学、化学、生物学、物理学を英語で学ぶ「理数系英語」の講義を定期的に行い、2010年と2013年に学生による「授業評価アンケート」をもとに選ぶ「ベストレクチャー賞」を受賞。その後、上智大学、筑波大学などで英語講師を務めた後、2023年から家族でアメリカ暮らしを始める。著書に『たくや式中学英語ノート』シリーズ(朝日学生新聞社)、『MP3CD付き ガチトレ 英語スピーキング徹底トレーニング』シリーズ(ベレ出版)。TOEIC955点、TOEFL101点。

「たくや式中学英語ノート」全10巻

【著者によるYouTubeビデオ講義付き】

 中学英語の基本を学年別・単元別に学ぶ、書き込み式薄型問題集シリーズです。
 「中学生のときに英語が本当に苦手だった」と自認する著者がつくるテキストは、英文法を基礎の基礎から丁寧に解説し、豊富な問題で繰り返し英文を書かせるのが特徴です。前に習ったことの復習が何度も出てくるので、自分の弱点を知って、正しい英語を身につけることができます。

1巻をAmazonで見る
(外部リンク)

「たくや式 どんどん読める 中学英語長文」全4巻

【著者によるYouTubeビデオ講義付き】

 学年別の単語・文法を使ったオリジナル長文(会話文・メールの文章・ブログの文章・講義など)を各巻11話収録。どの学年の方も、無理なくどんどん長文が読める仕組みになっています。定期テストや入学試験でよく出題される穴埋め問題や、文脈把握問題のほか、たくや式ならではの、「英語の文法を自分の言葉で説明できるか」を問うたくさんの問題を収録。

1巻をAmazonで見る
(外部リンク)

※本サイトに掲載されるサービスを通じて書籍等を購入された場合、売上の一部が朝日学生新聞社に還元される事があります。