大谷義夫先生の「知っ得カルテ」

一年で最も寒い季節です。昨年秋から8年ぶりに大流行しているマイコプラズマに続いて、風邪、インフルエンザ、新型コロナも猛威をふるっています。学校や職場だけでなく、電車やバスの中でも咳をしている方が目立ちますね。解熱して喉の痛みや倦怠感が改善しても、咳だけ長引いている方が多いようです。

マイコプラズマ肺炎は飛沫感染、接触感染で生じる呼吸器感染症です。潜伏期は2~3週間で、頑固な咳が特徴です。肺炎まで進行してしまう方、マイコプラズマ咽頭炎、マイコプラズマ気管支炎でとどまる方などいろいろです。

ウォーキングニューモニア

マイコプラズマ感染症は15歳以下の小児が中心ですが、高校生や大学生、二十代の若者にも広まり、同居する親御さんに感染するケースも。肺炎にも関わらず、高熱や倦怠感がなく頑固な咳だけが続いたり、比較的元気に外来治療できることから、ウォーキングニューモニア(患者が歩き回れる肺炎)とも呼ばれます。

一方、肺炎が重症化して入院したり、胸膜炎、中耳炎、副鼻腔炎、皮膚紅潮を合併したり、稀なケースでは心筋炎、脳炎、ギラン・バレー症候群肝炎、膵炎、溶血性貧血を合併することもあります。

咳の分類と対処法

先ほど、喉の痛みや倦怠感が改善しても、咳だけ長引いている方が多いと書きましたが、その場合は、痰がからまない乾いた咳になりがちです。

3週間未満の咳を急性咳嗽(がいそう)、3~8週間続く咳を遷延性咳嗽、8週間以上の咳を慢性咳嗽と分類します。急性咳嗽では、風邪をはじめとした感染症の咳が主流で、長引けば長引くほどアレルギー、免疫による咳、咳喘息や気管支喘息の可能性が高くなります。

風邪の咳なら市販薬で対応できます。咳喘息や気管支喘息には、吸入ステロイドによる治療が有効ですので、適切な診断と処方が必須です。3週間未満の咳の場合は、風邪などの感染症による咳の可能性が高いとしても、つらい咳を長期間放置できませんので、2週間を目安に、長引く咳でお悩みの方は医療機関を受診してください。

2週間以上、咳が続く場合は、レントゲンや血液検査をして、肺炎、結核、肺がんの有無を確認してください。肺機能検査や呼気中一酸化窒素濃度(呼気NO濃度)測定などで喘息の可能性を確かめるためにも、医療機関で受診してください。

大谷義夫(おおたに・よしお)

1963年生まれ。89年に群馬大学医学部卒業。東京医科歯科大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授を経て、現在、池袋大谷クリニック院長。 呼吸器内科のスペシャリストとして新型コロナウイルス対策などでも情報発信をおこない、患者に寄り添う具体的なカウンセリングに定評がある。

(朝小かぞくの新聞2025年1月20日号)