作者・角野栄子さんとさし絵・佐竹美保さんが対談

13歳の魔女・キキが「ひとり立ち」をめざす物語『魔女の宅急便』。お話が生まれたきっかけは、ある1枚の絵だったといいます。先月、1巻の出版から40周年をむかえました。これを記念して1月24日、作者の角野栄子さんと、3巻からの絵を手がけた佐竹美保さんの対談イベントが東京都内でありました。(小勝千尋)
娘がかいた絵がきっかけに 角野さん

『魔女の宅急便』は1985年に1巻が出版されました。89年にはアニメ映画化もされ、大人気に。これまでに全6巻と特別編3冊が出ていて、主人公キキの成長や結婚、子育てまでや、周りの人々のお話がえがかれています。20をこえる国や地域でも翻訳出版されています。
角野さんがこの物語を書き始めたきっかけは、娘のかいた1枚の絵でした。「ラジオを聞きながらほうきに乗っている魔女だったの。新しいでしょ? 昔話に出てくる魔女ってこわい人が多いから、面白いなと思って。当時娘は12歳か13歳で、じゃあ同じくらいの年の魔女のお話を書いてみようと思ったの」
主人公のキキは13歳の満月の夜、親元をはなれてひとり立ちします。「13歳で自立は早いのでは?」と聞かれることがよくあるそうです。角野さんは「16歳だとつまらないじゃない」と話します。「16歳だと、もう少し常識的になって、大人の考え方をするようになる。13歳はまだそういうところがなくて、そこに面白さがあると思ったのよ」
6巻では35歳 「成長していくからかけた」 佐竹さん
3巻からの絵を手がけるのは、さし絵画家の佐竹さんです。白いボードの上に黒い塗料がぬられ、けずって絵をかく「スクラッチボード」という画材を使っています。
すでに1、2巻やアニメ映画の世界がある中で、どうやって「自分の絵」をかくか、なやんだそうです。「キキは3巻では16歳、6巻では35歳になる。成長していくからかけたのだと思います。自分に正直で、むちゃなことをして、落ちこむキキをかくのが好きです」

40年をふり返り、角野さんは「読んでくださる方がいたから40周年をむかえられました。幸せなことです」。佐竹さんは、6巻でひとり立ちの旅に出た、キキの子どもの行方が気になるそうです。「特に(双子の弟)トトがどうなったのか心配」と話すと、角野さんは「私も実はトトのことは心に引っかかっているの」と続編への意欲をのぞかせました。
角野さんが館長「魔法の文学館」

角野さんと佐竹さんの対談が行われた「魔法の文学館」(東京都江戸川区)は、角野さんが館長を務める文学館です。角野さんの功績を知ることができたり、たくさんの本が読めたりします。40周年を記念した展示もあります
角野栄子(かどの・えいこ)
1935年、東京生まれ。『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』(70年)でデビュー。数多くの児童文学や翻訳作品を手がけた。2018年、児童文学のノーベル賞といわれる「国際アンデルセン賞」を受賞。
佐竹美保(さたけ・みほ)
1957年、富山県生まれ。主なさし絵作品に「守り人」シリーズ(偕成社)、「<新装版>ハリー・ポッター」シリーズ(静山社)、「竜が呼んだ娘」シリーズ(講談社)などがある。
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子ども書評委員も質問しました 「子どものころの夢は?」

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