
大谷義夫先生の「知っ得カルテ」
過敏性肺炎
寒さのピークは越したものの、まだ寒い日が続いています。風邪、インフルエンザ、新型コロナは、上気道炎といって、鼻から喉までの炎症ですが、気管支炎、肺炎に至って重症化してしまうケースがあります。インフルエンザ感染後、抗ウイルス薬を使っても解熱せずに5日以上経過した場合には、肺炎の合併も疑ってください。インフルエンザ感染後、16~64歳で0.83パーセント、65~79歳で2.1パーセント、80歳以上で13.3パーセントが肺炎を発症すると報告されています。インフルエンザで気道の線毛がダメージを受けて喉の免疫が低下したところで、外から侵入した細菌を喉で排除できず、気管支・肺まで細菌が侵入して肺炎を生じるのです。
誤嚥性肺炎との関係
風邪、インフルエンザ、新型コロナの後、高齢者は誤嚥性肺炎のリスクも高くなります。誤嚥性肺炎は飲食物の誤嚥で生じるのではなく、夜間就寝中に口腔内細菌を含んだ唾液を誤嚥して発症します。数日間寝たきりなどで体力が低下すると、全身の筋力低下とともに喉周囲の筋力も低下して、誤嚥しやすくなるのです。誤嚥性肺炎の治療で寝たきりになると、更に体力が低下して誤嚥しやすくなり、誤嚥性肺炎を繰り返して死に至ることがあるので要注意です。
加湿器の良し悪し
加湿器で湿度を50~60パーセントにしておくと、気道の線毛の活動を活発にして喉の免疫を上げるので、呼吸器感染症対策にとても有効です。ただし、加湿器の水は毎日交換しないと、タンク内にカビや細菌が繁殖し、加湿器から噴霧された蒸気内のカビや細菌が人間の肺に侵入して、アレルギー性肺炎を発症します。これを、加湿器による過敏性肺炎、加湿器肺と呼びます。
鳥が原因の肺炎
冬から春の過敏性肺炎として重要なものに、鳥の糞や羽毛につくタンパク質を吸入して発症する鳥関連過敏性肺炎があります。当初はインコや鳩を飼育している人に発症しうる肺炎と考えられていましたが、近所に鳩小屋があったり、公園や神社に群れで生息する野鳥や鳩と頻繁に接触する、家庭菜園での鶏糞肥料の使用、更にはダウンジャケットや羽毛布団などの羽毛製品でも発症することがあります。冬の満員電車ではダウンジャケットを着ている人が多いので、注意が必要になります。発熱などの症状があれば急性過敏性肺炎として治療しやすいのですが、症状が乏しいと原因に気づかず、慢性化することがあります。過敏性肺炎は間質性肺炎の一つのタイプで、原因不明の間質性肺炎の中に一定の頻度で鳥関連過敏性肺炎が存在すると考えられています。進行すると、生命に関わりますし、10パーセント程度は肺がんを合併します。
肺炎は生命に関わることがある怖い病気です。2~3週間も咳が続けば、風邪ではないと判断し、医療機関を受診してください。
大谷義夫(おおたに・よしお)
1963年生まれ。89年に群馬大学医学部卒業。東京医科歯科大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授を経て、現在、池袋大谷クリニック院長。 呼吸器内科のスペシャリストとして新型コロナウイルス対策などでも情報発信をおこない、患者に寄り添う具体的なカウンセリングに定評がある。
(朝小かぞくの新聞2025年2月20日号)

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