
2025年度の中学入試(4月に入学するための試験)が一区切りつきました。今春はどんな傾向がみられたのでしょうか。首都圏と関西地区について、おもな動きや特徴をそれぞれの専門家に聞きました。(編集委員・沢辺雅俊、清田哲)
プチサンデーショックでチャンス広がる
まず首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県)について。進学塾・栄光ゼミナールの藤田利通さん(入試情報センター責任者)は「受験者数、受験率ともに2024年度と同様、高い水準を維持している」と話します。私立中・国立中の受験者数は5万2300人(推計速報値)で前年度並み。受験率は18.10%(前年度は18.12%)でした。
注目されたのは「プチサンデーショック」。2月2日が日曜日にあたり、キリスト教系の学校のなかには日程などを見直す動きがみられました。その一つが東京・青山学院中等部で例年の2月2日から2月3日に変更しました。大学付属校をめざす男子は2月2日の明治大学付属明治中や立教池袋中、学習院中等科(いずれも東京)と、青山学院中等部を受けることができ、チャンスが広がりました。ただ、青山学院中等部の男子の倍率は前年度の2.9倍から4.0倍になり、きびしい入試に。女子も5.0倍から5.5倍になりました。
最難関校の受験者数が少なくなり、それに次ぐレベルの学校で増えた点も目を引きました。東京の「御三家(男子校の麻布中、開成中、武蔵中、女子校の桜蔭中、女子学院中、雙葉中)」はすべてで減り、たとえば麻布中は59人減、桜蔭中は49人減。一方、東京・海城中は2回の入試の合計で48人増、東京・鷗友学園女子中も計81人増でした。藤田さんは「『より偏差値が高い学校に何が何でも』ではなく、自分に合う学校選びができている」。
高校無償化の影響大きく
私立中や国立中では高い受験熱がつづきますが、公立中高一貫校を視野に入れると様相は異なります。1都3県の公立中高一貫校に出願したのは前年度よりも1190人少なくなり、東京都立の中高一貫校の繰り上げ合格者は99人になりました。藤田さんは「何年もしっかり勉強しないと受からないというきびしさが知れわたったことや、東京都の高校授業料の実質無償化の影響もあるのではないか」と分析します。
日能研関西の森永直樹さんによると、関西地区(京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山)の私立中の受験者数(初日の午前入試)は1万7583人と、前年度よりも271人増えました。受験率は約0.35ポイント高くなり、10.52%になりました。2府4県による統一入試日がはじまって以来、過去最高となりました。
めだった動きがみられたのが大阪府にある学校。家庭の収入にかかわらず、私立高校の授業料を2026年度までに無料にする「完全無償化」の影響から、今春は前年度よりも529人増え、8550人になりました。森永さんは「予想以上に完全無償化は大きな影響で、受験層がより広がっている」とみています。
増えた学校の出願者数をみると、大阪星光学院中は前年度の707人から753人、関西大学第一中(どちらも大阪)は458人から593人に。大学進学実績が高まり、新コースを設けた大阪・大阪桐蔭中も920人から1253人になりました。
森永さんは「将来の教育をみすえ、大学付属校の人気もつづいている。偏差値などの数値にとらわれず、どんな中学校生活を送りたいかなどを、じっくり考えることが大切」とアドバイスします。
(朝日小学生新聞2025年2月21日付)

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